‡箱館‡

□『I love you』って言ってみな
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「土方君。『I love you』って言ってみて?」
兵法の本を借りに部屋を訪れていた土方に、意味深な笑みを浮かべつつ、榎本が言った。
「はぁ?『あい…』何ですって?」
怪訝な顔して土方が聞き返す。
「『アイラブユー』。ほら、言ってみて?」
「…どういう意味ですか?」
やけに楽しそうな榎本の様子が怪しくて、土方が不審げに問うた。
「英吉利や米利堅の言葉で、『仲良くしましょう』って意味だよ。」
根本的には間違っていないと言えなくもない説明をし、榎本が土方ににっこりと微笑む。
この笑顔がかなりの曲者だ。
「仲良く…?」
首を傾げながら土方が繰り返す。
「そう。ね?言ってみて。」
若干、怪しむ気持ちはあったが、榎本の笑顔の前だと、どうも断りづらく、土方は渋々言う通りにすることにした。
「あ、あいらぶゆぅ…?これでいいんですか?」
理由はわからないが、妙に気恥ずかしいその言葉を言い終え榎本を見ると、押さえきれない悦びを噛み締めているという風情で、額に手を当て、溜め息を吐いている。
「え、榎本さん…?」
土方が片眉を上げつつ呼び掛けると、はっとしたように榎本が土方を見た。
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