‡箱館‡

□君のとなり
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どこまでも果てしない真っ白な雪景色。
青く広い大海原も好きだけど、この景色も悪くない。
ただでさえとんでもない低さの気温に、海からの風が吹いてきて、ひどく身体は寒いけど、その寒さも今日はあまり不快ではない。
ブーツで昨晩降ったばかりの純白の雪を踏みしめるたびに心が弾む。
だが、ただ一つ…。
頗る良い今日の気分に水を差すことがある。


「磐吉…。」
「なーに?源吾。」
甲賀がきつい目付きで後ろを歩く松岡を振り返った。
「何でわざわざ俺の後ろ歩くんだよ。」
一緒に散歩に行こうと甲賀が誘い五稜郭を出てから、松岡はずっとこの調子だ。
甲賀の少し後ろを絶対に甲賀に追い付かないように付いてくる。
「いやいや。お気になさらず。」
相変わらずお茶らけた松岡の言い方に甲賀が眉をひそめる。
「ふざけるなよ。」
そう言うと甲賀は再び前を向きすたすたと歩き始めた。
「おい、源吾。待てって…」
その後を松岡が追い掛ける。が、追い付いてもやっぱり甲賀の半歩ほど後ろを歩くことを止めない。
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