‡箱館‡

□慟哭
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「野村。俺が死んだら、泣いてくれるか?」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
「は…い…?」
混乱する頭で、辛うじて、聞き返すような内容の言葉を口に出せた。
と、その様子がよっぽど間抜けだったのか、土方さんがくぐもった笑いを漏らした。
その笑顔に思わず俺は見惚れてしまう。
普段のきりっとした表情も好きだけど、こんな風に肩の力を抜いた時の土方さんは堪らなく綺麗で、俺は心底好きだった。
「いきなり弱気なことを言い出したから驚いたか?」
「い、いえ!」
慌てて否定した俺の様子がまたおかしかったらしく、土方さんが今度はけらけらと声を上げて笑った。
無邪気に笑うその顔がひどく幼くて、この人は本当に自分より年上なのかと、少し疑いたくなった。
「確かに俺らしくねぇな。てめぇが死んだ後のこと考えるなんてよ…。」
そう言うと、土方さんは少し自嘲気味に笑った。

『死』…。

二度目に言われて、漸く俺は理解する。
「っ…死ぬなんて言わないで下さい!!」
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