08/02の日記
16:28
月光症候群(屑牛)
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繰り返しみる悪夢ともいえるアイツの幻。
それは、 にも似た感情ゆえに。
『ぼくを恨んでる?』
繰り返される夢のなかで、オマエは言った。
『あぁ、恨んでいる。』
何度目かも分からない同じ台詞を、オレは答える。
三年という月日がたった今もなお、忘れることの出来ないあの日の記憶。
あのオレとオマエが『対等』ではなくなった日に、すべてが壊れた。
オレを憐れんだような瞳、邪気がないからこそ言える、侮辱ともとれる程の情け。それまで互いを『ライバル』と認めあい対等だったオマエとの関係が壊れた瞬間に。オレのなかにあった自尊心は、落ち割れた硝子細工のごとく粉々にくだかれた。
オレの野球人生のなかで唯一、ライバルとして尊敬のできる相手…
ともいえるオマエに、あの目をされた時。
オレがどれだけくやしかったか、キサマに分かるか?そしてどれだけ、オマエにそんな目をさせた自分自身に失望したかも。
・・・オマエには、分からないだろう。
『ごめんね』
謝るな、キサマにそんな事を言われると余計にみじめになる。
やはりわかっていない、オマエは。
悪いのはオマエではない、だからこそオレは腹が立つんだ。
はじめて、渇望した。
無理だと思っていた進学を、どうしてもしたいと。再びオマエと『対等』になるために諦めかけていた高校への道をすすむ事に決めた。オマエは華武に行きたいといっていた、オレも進むならそこしかないと考えていたからな。だから推薦で行こうと思ったんだ。誰にも迷惑などかけずに自力で華武に通ってみせる。そうすれば、きっと変わる。もうオマエにあんな目をさせることはないだろう。以前のように、オレとオマエは、同等のもの(夢)を見れるはずだ。
だが、オマエはそんなオレの気持ちにも気付かずに。まるでオレをさけるように進路希望を十二支にかえていた。
そこでようやく気がついた。
オマエにとって、オレは
オレとオマエの交わした『約束』は、牛尾御門という人間にとっては。
『その程度』のものだったのだと。
「恨まない方が、おかしいだろう…」
救いようのない絶望感が、オレをおおった。
…オレが、友としてライバルとしてチームメイトとして、どれだけオマエを求めていたか。
どんなにオマエを欲していたか。
オマエには、まったく分からなかったのか。
本当にオマエは、なにも気付かなかったというのか。
「――キサマなどには分かるまい。どれほど、オレが …!」
オレはただ一人認めたオマエと、いつも対等でいたかった。
オマエの目線に、いつも在りたかった。
オマエと同じところで、「夢」をみたかった。
――そうでなければ、オレはオマエの隣にさえいられなかったんだ。
『高校に行っても』
キサマが、そう言ったんだろう。
なのに、何故いまさらになってオレを裏切った?
なんの為に、オレがオマエを避けたか。
それさえオマエは気付かなかった。
それほどに『どうでもいい存在』だったという事か、オレという人間は。
オレはオマエの隣にいるために、『対等』を望んだ。そのためには、オマエの傍を離れる必要があった。
オレが変わらなければ、オマエはずっとあの目でオレを見続けただろうからな。その目があるかぎり、オレとキサマが『対等』に戻る事など、ありえない。だからこそすべてを乗り越えるため、オレは必死で強くなろうとしていた。
もうオマエにあんな目をさせないように。
二度とあんな風に同情などされないように。
その為になら、キサマと離れることさえ厭わなかった。
…だが、結局は。
オレだけ、だったのだ。
そんな風に求めていたのも焦がれていたのも、いつかまた『対等』な関係に戻れると、そう思っていたのは。望んで、いたのは。
――すべて、オレだけだったのだ。
『屑桐…』
消えろ、キサマに用などない。
消えてしまえ、
道が別たれた今、もう二度とオレがキサマを求めることはない。
ずっとしまい込んでいた本音を吐き付けた。
それ以来、夢にアイツが現われることはなくなった。
× × ×
理由があるなら、みせてみろ。
グラウンドで。
オレを裏切ったことに、
意味があったというのなら。ちゃんとそれをオレに証明するがいい。
…示してみせろ、牛尾
試合のあとで手を差し向けてきた時の、まっすぐオレを見据えた牛尾の瞳が、なぜか消えない。
× × ×
やはり、キサマの想いなどその程度のものだったな。
× × ×
消していなかった『刻印』オレとの思い出を清算していなかった牛尾。
やめろ、そんなこと
今更なんの意味がある?
また、謝ったな。
キサマはずるい。
馬鹿野郎。
…‥すべてを越えてなお、オレは結局、オマエを嫌いになることが出来なかったのか…‥。
『貸せ、見ちゃおれん』
ほんの少し残るくやしさは、互いの想いの差に。
消えなかった苛立ち、執着、絶望と。
恐らくこの先も今夜の月をみる度に思い出すであろう、オマエのすがた。
きっとその幻は。
一生消せはしないのだろう、それはあの月にも似て。どれだけ時が経ち霞んでも甦り、また満る。
それはまるで恋にも似た感情ゆえに。
― ― ― ― ― ―
執着と恋は似ている。 (意味不明文いがいの何物でもない。)
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