短編小説(BL注意)
□★方恋 ―カタコイ―
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だッりぃ朝練が始まるってだけでも気が重いのに。
朝っぱらから元気に動き回って、何やら部員達に声をかけまくっている想い人をみて。
更に、気が重くなった。
方<カタコイ>恋
なんとか最悪な朝を終えて、アンタのいない昼を越えて放課後の部室へ向かう。服を着替えてグラウンドに行くと、やっとアンタの顔が見れた。
捜していた相手を見つけられたコトにより少しばかり晴れてきた心が、何やら楽しそうに三年のセンパイ方と話す姿をみて、また影がさした。
…なに?(いつもそうだけど)今日は異様に仲良さそうにしてンじゃん。いつもはあんま話さないヤツにまで、話し掛けたりしちゃってるし。…ムカつく。
じりじりと胸に込み上げてきていたイラつきが、頭を撫でられて照れた様にはにかむアンタをみて。一気に増した。
(気付けよ、クソッ!)
アンタが他のヤツを見る、そして、笑う度に。焦燥感に駆られながらそう思う。オレの気持ち、知ってるくせに。他のヤツに懐いてる、…微笑んでる。オレ以外のヤツに、そんな顔するなんて。そんな場面を、オレに見せてくるなんて。
アンタ、ずりぃよ…録せんぱい。
『好きっスよ、録センパイ。』
オレが、何度そう言ったって。
想いを伝えてみたって。
アンタは ただ、
『ミヤは、誰にでもそう気じゃん。』
――の、一言であしらってばかりで。いつもオレの言葉‥オレの、ことを。信じてくれない。告白の返事を、考えてもくれない。それどころか、
『大体そーいうのは‥、軽く口にだしちゃいけない気だよ。』
ミヤって、なんか。やっぱり軽い気。
…なんて誤解される始末で。(マジ、ありえねぇ。すっげー勘違いされてンよ、オレ。それとも‥、ホントは遠回しに断られてンのか??)
ねぇ、センパイ。オレさ、マジで言ってンのに。マジで、アンタのこと。好きになっちまってるのに。なんで、そんなに。
オレのこと見てくンないの。相手にしてくれないの。オレの告白は、いつだって。アンタに言った言葉は、いつだって―――。
『…録センパイは、特別っスよ。』
ねぇ、勘違いしないで。アンタにだけは、誤解されたくない。そう思って、意味を強調して再度 告ってみれば…、
『…ミヤは、誰にでも平気でそういうコト言える気だよね。‥あ。だから女の子にもてるんだ?』
あっさりと、そう返されて。
…これでも、本気の告白だったンだぜ?今の、本心で言ってたンだぜ?ちょっと位さ、揺れてくれよ。こっち見てくれよ。飽きっぽいオレが、面倒臭いコトなんて、大嫌いなこのオレが。
本気で、惚れた。って、
言ってンだぜ?
せめて悩んでるようなフリくらいしてくれたって、よくねぇ?
『…本気で、好きなんっスけど。』
食い下がってそう、言えば。
『…じゃあ俺も、ミヤのこと好き気!』
…で、
『俺、ホントに華武の皆、大好き気だよ〜。』
…と返される。だから、違うって!オレのは、そんな意味じゃねぇって。とぼけるのも大概にしてくれっての。
『アンタは、特別。』…その意味ぐらいさ、分かってくれよ。
――いい加減、気付いて。
『ミヤー!なぁなぁ、今度の休み、部のみんなでカラオケ行く気〜。』
他のヤツ等との会話が終わったらしく、走りながら近寄ってくる録センパイ。
ミヤも、行く気でしょ?と、まるく可愛い瞳で笑いかけてくる。…いつもなら、アンタに声かけられるだけで喜ぶとこだけど。今回は、別だ。
『…‥あー、どっちでもっス。』
どうでもいいとばかりに、投げ遣りに答える。我ながらガキくせー。でも、イラついてる気持ちをアンタにぶつけないだけで、今は精一杯だ。
『…なんか、機嫌わる気じゃね?どうかした??』
…機嫌わるい、だって?
当たり前だろ。アンタが笑いかけるヤツらへの嫉妬と、そんなにまでアンタに執着しているオレの気持ちに気付いてもくれないアンタの無神経さに。‥こっちは今にも、爆発してしまいそうだ。