短編小説(BL注意)

□☆屑桐無涯・青春diary
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ボーン、ボォーン…。


宿題を片付け、皆で折り紙を折っていると。
鈍い音をたてて、うちの古時計が鳴った。


「…そろそろ、か。」


紙を折る手をとめてオレが立ち上がると、牛尾がオレを見上げながら「どうしたの?」と尋ねてくる。


「…夕飯の支度をしてくる。」

「…あ、そっか。じゃあ、僕も何か手伝うよ!」


「…いや、今日は良い。オマエは弟達と一緒に、ここを片しておいてくれ。」


折り紙まみれになった食卓を指差し、苦笑混じりにそう告げると牛尾の方も
苦笑混じりに頷き、返事を返した。


「…分かったよ。何か手伝える事があったら、呼んで?」

「…あぁ。分かった。」








…それから、数分後。


出来上がった料理をテーブルで囲みながら、皆で夕食をとる。


「…‥美味しい!」

「そ、そうか?」


「うんっ!僕、屑桐君の御飯は美味しくて好きだよ。屑桐君、きっとイイお婿さんになるよね。」

「…………‥!」


牛尾はにっこりと笑って、オレの作った料理を嬉しそうに口に運び続けた。


…バカ野郎。

そんな言葉を、あっさり言うな。

…照れる、だろうが。


「無涯兄ちゃん、どうしたの?顔、赤いよ??」


「…〜ッ?そ、そんな事はないぞ‥!きっと気のせいだろう!!」


「え?あっ、本当だ‥!屑桐君、きみ本当に顔が赤いよ‥?もしかして、熱でもあるんじゃないのかい…?大丈夫?」


オ マ エ の せ い
だ ろ …‥!!


喉元まで出かかった声をなんとか飲み込み。「大丈夫だ」と繰り返す。
…が。牛尾の奴は変わらずに、心配そうな表情でこちらを見ている…。


(だから、オマエのせいだろうが…‥!!)


まったく、天然ってのは始末が悪い…。

夕飯を食べ終え、後片付けをしながらそろそろ牛尾の奴を風呂に入れようと思い、声を掛ける。
(客人は一番最初に風呂に入れるのが、うちの基本だ。)


「…おい、牛尾!オマエ、風呂に入れよ。」


「…うん?分かったよ、ありがとう。」


オレは牛尾の返事を聞いてから台所に戻り、使った皿を洗い始める。
洗った大量の皿を水ですすぎながら、オレは安堵の息をついた。


…正直、泊りに来た牛尾に弟達が何か言うのではと、(結婚して!…とかな。)多少不安があったのだが…。
この分だと、なんとか無事に終わりそうだ…。


水をとめて、食器を水切りしていると居間の方からなにやら騒々しい声が聞こえてくる。何事かと思い居間に向かうと、そこには妹弟に囲まれ身動きがとれずにいる、牛尾の姿があった。


「…オマエ達、何をしている?牛尾オマエ、まだ風呂にいってなかったのか??」

「う、うん‥その、ちょっと…。」


牛尾は、なにやら困った様に口をもごつかせている。一体、どうしたんだ…?


「…‥おい、オマエ達。そんなに、ひっついていては牛尾が風呂に入れんだろう?」


軽くいなしながら、弟達を牛尾から引き離す。
…すると、不満そうな顔をした弟妹達が一斉に口を開き出した。


「…だって!ミカちゃんとお風呂はいりたいのに、みんながジャマするんだよ…!!」


「ジャマしてるのは、お兄ちゃんでしょッ‥!?ミカちゃんは私と一緒に、お風呂に入るんだもんっ!!」


「ちがうよ!ボクと!」


「わたしと〜っ!!」


・・・なるほど。

これは確かに、困る。
牛尾の奴が口ごもるのも、ムリはないな。自慢じゃないが、うちの風呂は、そんなに広くはない…。
とてもじゃないが、牛尾と妹達が全員一緒に風呂に入るなんてのは、到底ムリな話だ。

 
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