短編小説(BL注意)
□☆屑桐無涯・青春diary
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部活終了後の昼下がり。今日は、とうとう牛尾の奴がうちに泊まりに来た。弟も妹も、牛尾の奴が来るのを今か今かと待ち望んでいたらしく皆、玄関の扉を開けると同時に我先にと、オレ達の元へ集まる。
どうやらお袋は、今夜も仕事で帰りが遅くなるらしい。
子供だけというのは、少々不安な点もあるが‥。
(仮にも人様の子供を預かっているのでな。)
まぁいつもの事だし、なんとかなるだろう…。
「ミカちゃん、いらっしゃ〜い!!」
「‥ミカちゃん!俺達、学校から帰ってからずっとミカちゃんを待ってたんだよ〜!」
「さぁ!ミカちゃん、どうぞ上がって!」
「ハハッ‥、ありがとう皆。僕も、皆に会えて嬉しいよ。じゃあ、お邪魔します…。」
「・・・・・。」
「…屑桐君?どうかしたのかい??」
「・・い、いや・・別に・・・。」
いつまでも靴を脱がずに玄関で固まったままのオレを見て、牛尾が不思議そうに首をかしげる。
弟、妹よ…!兄ちゃん、本人に「ミカちゃん」って言うのだけは、流石に予想が出来なかったぞ‥。
頼むから、昨日の会話をコイツの目の前で再現するのだけは、勘弁してくれよな…‥。
「…‥屑桐君?」
しっかりしろ、オレ…!牛尾が心配そうな顔をして、こっちを見ているではないか…!
「・・いや、なんでもない。・・・上がれよ。」
しかし、コイツ…。男の自分が「ミカちゃん」などと呼ばれている事に対して、なんとも思わんのだろうか…?
オレだったら、牛尾の弟や妹に「ムガちゃん」なんて呼ばれるのは嫌だ。
考えたくもないぞ…!!
そこまで考えてから、後ろを振り返ってみる。
そこには、いそいそと嬉しそうに脱いだ靴を揃えている牛尾の姿があった。
やはり先程の弟達の発言を気に留めている様子は、微塵もない。
「…まぁ、オマエだしな‥…。」
「…‥???」
牛尾がうちに来てから、早2時間。牛尾の提案で、先に宿題を終わらせようという事になり、(弟達もいるので居間で)二人して黙々とプリント用紙に答えを埋めてゆく。
が…‥!
その間でさえ、弟妹達が牛尾から離れる気配はない…。
「ねぇねぇミカちゃん!宿題教えて〜!!」
「あ、ずりぃぞ!じゃあオレもっ!!」
(…弟妹達よ、オマエ達いつもはそんな風に宿題を聞いてきたり、しないだろうが…‥。)
「うん、いいよ!」
おい牛尾…!オマエも、その笑顔はやめろ!
じつは今、オレの大事な弟妹達がオマエに惚れちまってて、すっごく困ってるんだよ…!!
その笑顔に誘惑されて、弟達がアブナイ道に走ったりしたら、どーしてくれるんだ…!?
今にも、この間みたいな喧嘩が勃発するんじゃねーかと、オレは内心ずっとヒヤヒヤしっぱなしなんだよ…!
そんなオレの切羽詰まった様子に気付く気配もなく、牛尾の奴は楽しそうに弟達に勉強を教えている…。牛尾と弟達の無邪気な笑顔を見て、オレは誰にも聞こえないようにひっそりと溜息をついた。