短編小説(BL注意)

□† 最悪試練
4ページ/9ページ



そこにいたのは僕の最愛の恋人であり、
最大のライバルであり、最高の親友。

…そう、屑桐君だった。




「ど、どうしたの…その
 格好…‥!」



僕は動揺した震える声で、屑桐君に尋ねた。


純白といえるまでにまっ白な服に、膝丈までしかないスカート。頭につけている飾りは世間一般でナースキャップとよばれるものだった…。

そう、彼は『看護婦』さんのコスプレをしていた。




「〜〜‥なっ!牛尾‥!? き、キサマ…!見るな! 笑うな!近寄るな!!」



「…っ、見るなって言われ ても‥ッ‥遅い、し…。 わ、笑うなと…言われて もっ…!ぷっ‥‥!」




「・・・・・!!!」




笑うなと言われても、そんなのムリだ。
だって彼、屑桐君は…、
身長は男子の中でもかなり高い方で。お世辞にも、女顔とは言えない男らしい顔をしていて…。
しかも彼のいつもの口癖は「バカは死ね」だの「殺す」だのといった言葉ばっかりで…‥!!




「‥そ、その屑桐君が、
 女装…っ!あまつさえ、 看護婦さんの…!
 し‥しかも、君っ…、
 す、すごく…っ!!」




僕は必死に笑いを堪えながら、言葉を紡いだ。
そんな僕の様子を見て、
訝し気な顔をした屑桐君が小さく聞き返してくる。





「……‥‥すごく?」




「す…すごく‥、蟹股・・ ・・・っ!!」




「・・・・・!!!」




最後の言葉を言った途端に、僕はその場でおなかを抱えて笑い出した。
堪えた分だけ笑いは止まらず、むしろ大笑いだった。僕だって人の事をとやかくいえる格好をしてないし、なにより、こんな風に彼を笑ってはいけないと分かっていたけれど…。




「・・・キサマ、あとで
 覚えてろよ・・!!」



「‥くっ、あははは!!
 屑桐く…そ、その格好で すごんでも‥、あはは! 全然っ…っ‥こ、恐く
 ないよ…‥!!!」



「・・牛尾、キサマ・・・ ・・!!!」




周囲がはらはらとしながら僕の命を心配するなか、僕は彼の事をずっと一人で笑い続けていた。
だって、看護婦さんの格好をした屑桐君(しかも蟹股)に睨まれても…ねぇ。



笑うしかないだろう??






  + + + + +




「牛尾くーん、4番と
 2番のテーブルに、
 コレとコレお願い〜。」



「あ、はーい…!!」




学園祭がはじまり店を開店した早々で、僕らのクラスは大忙しだった。
それにしてもやけにお客さんが多い気がする。やはり、他のクラスとは違った趣向がうけたのだろうか…?

あまりにも忙しすぎて、
女装に対しての照れがなくなってる程だ。



女子達は全員、調理にまわって裏方作業なので接客は、すべて男子が担当した。最初の方は皆して、少し照れがあり「人に見られたくない」とか言っていたのだが…。


やはりここまで混んでると、そんな事を言ってはいられない。




「す、すみません、お待た せしました…!!」



込み合う教室の中で、僕は慌てて料理をはこんだ。
すると―――‥。




「‥ヒュウ!かわいい!
 ねーねー!あとで君も
 俺たちと一緒にまわらな い??」


「バッカ、お前よく見ろよ 。ここ女装喫茶だぜ?」



「えっ!?嘘だろ、なに、 君も男〜??」



(…この忙しいのに、ヤな とこに当たったなぁ。)



内心ではそう思いつつも、僕は接客用の笑顔でにっこりと笑って対処する。




「…えぇ、そうですよ。
 でわ、失礼致します。」



そう言って料理を置き、
その場を離れようとしたら、後ろから客に手を掴まれた。



「・・・なっ!?」



「まぁ、そーあわてんな
 よ。本当に男か、確かめ てからでも遅くないじゃ ん?」


「おッ!それいいねー。
 剥いちゃう?」


「―‥っ、なに…?やだ、 やめて…‥!!」
 

 
  
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ