短編小説(BL注意)
□† 最悪試練
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そこにいたのは僕の最愛の恋人であり、
最大のライバルであり、最高の親友。
…そう、屑桐君だった。
「ど、どうしたの…その
格好…‥!」
僕は動揺した震える声で、屑桐君に尋ねた。
純白といえるまでにまっ白な服に、膝丈までしかないスカート。頭につけている飾りは世間一般でナースキャップとよばれるものだった…。
そう、彼は『看護婦』さんのコスプレをしていた。
「〜〜‥なっ!牛尾‥!? き、キサマ…!見るな! 笑うな!近寄るな!!」
「…っ、見るなって言われ ても‥ッ‥遅い、し…。 わ、笑うなと…言われて もっ…!ぷっ‥‥!」
「・・・・・!!!」
笑うなと言われても、そんなのムリだ。
だって彼、屑桐君は…、
身長は男子の中でもかなり高い方で。お世辞にも、女顔とは言えない男らしい顔をしていて…。
しかも彼のいつもの口癖は「バカは死ね」だの「殺す」だのといった言葉ばっかりで…‥!!
「‥そ、その屑桐君が、
女装…っ!あまつさえ、 看護婦さんの…!
し‥しかも、君っ…、
す、すごく…っ!!」
僕は必死に笑いを堪えながら、言葉を紡いだ。
そんな僕の様子を見て、
訝し気な顔をした屑桐君が小さく聞き返してくる。
「……‥‥すごく?」
「す…すごく‥、蟹股・・ ・・・っ!!」
「・・・・・!!!」
最後の言葉を言った途端に、僕はその場でおなかを抱えて笑い出した。
堪えた分だけ笑いは止まらず、むしろ大笑いだった。僕だって人の事をとやかくいえる格好をしてないし、なにより、こんな風に彼を笑ってはいけないと分かっていたけれど…。
「・・・キサマ、あとで
覚えてろよ・・!!」
「‥くっ、あははは!!
屑桐く…そ、その格好で すごんでも‥、あはは! 全然っ…っ‥こ、恐く
ないよ…‥!!!」
「・・牛尾、キサマ・・・ ・・!!!」
周囲がはらはらとしながら僕の命を心配するなか、僕は彼の事をずっと一人で笑い続けていた。
だって、看護婦さんの格好をした屑桐君(しかも蟹股)に睨まれても…ねぇ。
笑うしかないだろう??
+ + + + +
「牛尾くーん、4番と
2番のテーブルに、
コレとコレお願い〜。」
「あ、はーい…!!」
学園祭がはじまり店を開店した早々で、僕らのクラスは大忙しだった。
それにしてもやけにお客さんが多い気がする。やはり、他のクラスとは違った趣向がうけたのだろうか…?
あまりにも忙しすぎて、
女装に対しての照れがなくなってる程だ。
女子達は全員、調理にまわって裏方作業なので接客は、すべて男子が担当した。最初の方は皆して、少し照れがあり「人に見られたくない」とか言っていたのだが…。
やはりここまで混んでると、そんな事を言ってはいられない。
「す、すみません、お待た せしました…!!」
込み合う教室の中で、僕は慌てて料理をはこんだ。
すると―――‥。
「‥ヒュウ!かわいい!
ねーねー!あとで君も
俺たちと一緒にまわらな い??」
「バッカ、お前よく見ろよ 。ここ女装喫茶だぜ?」
「えっ!?嘘だろ、なに、 君も男〜??」
(…この忙しいのに、ヤな とこに当たったなぁ。)
内心ではそう思いつつも、僕は接客用の笑顔でにっこりと笑って対処する。
「…えぇ、そうですよ。
でわ、失礼致します。」
そう言って料理を置き、
その場を離れようとしたら、後ろから客に手を掴まれた。
「・・・なっ!?」
「まぁ、そーあわてんな
よ。本当に男か、確かめ てからでも遅くないじゃ ん?」
「おッ!それいいねー。
剥いちゃう?」
「―‥っ、なに…?やだ、 やめて…‥!!」