短編小説(BL注意)
□☆屑桐無涯・青春diary
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これは、とある中学校に通う屑桐無涯という名の
少年が書いた、愛と青春の悩みがつづられた一冊の日記帳。
その、ごく一部の内容である――…。
○月×日、木曜日 晴れ
今日は夕食時に、弟妹達の間で妙な「いさかい」が
起こった。始めのうちは大して気にする様な内容ではなかったのだが――。
それが何故かオレにとって予想だにしなかった、とんでもない事態へと発展してしまった。
しかもだ…‥!
事もあろうに、それはアイツ…。牛尾御門の事が原因だった――‥。
「あーーっ!お兄ちゃんっ、私の卵焼きをとったーー!!」
「なんだよ!早いもの勝ちだろ?」
「ちがうモン!ひとり二個ずつだもん!!もぉ〜!じゃあお兄ちゃんの明日のオヤツ、一口ちょうだいね!」
「え゙ー!?…そんなに食い意地はってるとお嫁にいけねーぞ!」
「…そんな事ないもん!私、いつも無涯お兄ちゃんのお手伝いでお料理やお洗濯だってやってるもん!
将来、良いお嫁さんになるって無涯お兄ちゃんが言ってたもん!!」
うちは兄弟が多いため、食事中というのはいつも戦争だ。おかずを、取った・取らないというこの様なやりとりも、大してめずらしい事ではなかった。むしろ、うちではよく見慣れた…ごく普通の光景だった。
しかし。ここからが少し、いつもと違っていた。
いつまでも言い合いを続ける二人を仲裁しようと、オレが口の中にある味噌汁を飲み込もうとした、その瞬間。
幼い妹の口から、信じられない一言が飛び出してきたのだ。
「それに私、将来はミカちゃんのお嫁さんになるんだもんっ…!!」
「・・・・・・・・・・・・・ブハッ!?」
「うわっ!?兄ちゃん、きったねー!!」
妹のその言葉を聞いたオレは、口の中にあったものを勢いよく外に吹き出してしまった。食事中に…しかも、よりにもよって弟妹達の目の前で、屑桐家の長男たるこのオレがなんたる醜態だ…‥。
…いや、待てよ!
そんな事よりも、今のは気のせいか…!?さっき妹の口から、何だか聞き覚えのある‥。とんでもない奴の名が、聞こえた様な気がしたのだが…‥?
ふっ‥!フハハハ…!
いや、まさかな…‥。
きっと、オレの聞き間違いだろう‥。
そうに違いない…‥!
動揺している自分の気をなんとか落ち着かせながら、汚してしまった台の上をふきんで拭きとる。弟と妹を見ると二人はなにも言わず、未だに睨み合いを続けている。こうなってはもう、手のほどこし様がない。
まぁ二人共、放っておけばそのうちきっと飽きて飯を食べるだろう…。そう自分の中で納得して、オレは箸を持ち直した。
すると、その瞬間。
今度は弟の口から更に恐ろしい発言が飛び出してきたのだ。
「ちょっと待てよ…!ミカちゃんはオレのお嫁さんになるんだぞ!」
からーんっ!
思わず持ち直した箸を落っことしてしまった。カラカラと箸の転がるむなしい空音が、重く沈黙した食卓全体に響いた。
し、しまった…!
まったく食事中に箸を落とすなど、下のものに示しがつかんではないか!!
・・・いや、待て。なんだか違うぞ。そんな事よりだな・・・・・!
さっきから話題に出ている、その『ミカちゃん』ってのは一体、どこのダレの事だーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!?
ま、まさかっ…!?
アイツの事じゃねーんだろうな…‥!?
考えるだけでも恐ろしい推理をしながら、オレがだらだらと冷や汗を流し続けていると…。二人の言い争いがますます激しいものにと変化してゆく。