小説
□春に降る雪
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「どうして…」
自分の置かれた状況を理解できず、少女は息を吐いた―
暗い闇。
今にも飲み込まれそう。
その暗黒の中で、一点だけ白く浮かび上がる異質な光景があり、一人の少女が横たわっていた。
眠りの少女は十代の中頃。透けるような青白い肌に、色素の薄い髪。
少女の華奢を通り越し、触れれば壊れてしまいそうな体は、無数の機械にチューブで繋がれており、少女はその機械によって生かされて"いた"。
少女を何人もの大人が取り囲んでいる。
その内の一人、白衣に身を包んだ初老の男が、残念そうに何かを告げた。
声は暗黒の少女までは届かない。
しかし少女は、男が何を言ったのか、大体予測することができた。
男の言葉を聴いた残りの大人たちが、
泣き喚き、
眠りの少女にすがりついた。
でも、"わたし"は知っている。
「あの哀しみは…」
―偽り。
彼らは、少女がいなくなる事で得する人間ばかりなのだから。
眠りの少女は、わたしだった。
―わたしは今日、病気で死んだ。