□声
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・・そろそろ、あの人が戻って来る時間だ。
僕はゆっくりと窓際の箱から降り、本邸への道向かって歩き出した。
いつか見つけた、あまり目立たないドアを引き、音を立てないように閉める。そして前に向き直って思った。
・・・今日は運が悪い。
一人の使用人と鉢合わせになってしまったのだ。
「ッ、わっ、若様!!?・・何故こんなところに?・・その恰好・・・どこかに行ってらしたのですか?」
「少し・・散歩に。仕事の邪魔をして、すみません」
「そんなっ、滅相もございませんっ・・」
「ありがとう・・・じゃ、僕はこれで」
「あっ、はい!」
まだ新人だろうか、やけに威勢の良さそうな彼はもの凄い勢いで頭を下げた。
まぁ、軽く交わせただけ助かったというものだ。
でも、一つ忘れていたことがあるのに僕は気付いた。
「あ、それと・・・・」
「っはい!!なんでしょうか?!」
これを言っておかないと、後で厄介なことになる。
「今のこの事は、秘密で・・・ね?」
「はっ、はいいっ!!!」
・・・これで大丈夫だ。
あとでごたごたが起きることはないだろう。
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