□初恋
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 俺の手元には、
 1つの指輪。


俺は今走ってる。それはもう走ってる。何も考えず、ただ夢中で。
頭を支配するのは、アイツ唯一人。学校を午前中早退しだ恋人゙と言う名のただ一人の男の為に俺は走ってる。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、急いで駆け出してきてしまった俺はつくづくバカだ。でもとにかく、すごく・・すごく心配だ。気持ちだけが先走る。
なんで俺・・こんなに心配してんだろ。自分でもそう思う。でも・・アイツの事になるととにかく心配で堪らなくなる。

コンビニに駆け込み、暖まりそうなものを買いあさる。ヤツの家の階段を駆け登り、呼び鈴を冷えた指先で押した。全力疾走のせいか、思わず咳き込む。

「侑也───・・。」

思わず呟くその名前。結構イッチャッてると思う。その通り俺はアイツにイカレてる。一人そんなことを思い、苦笑した。そうしていても、なかなか待ち人は出てこない。

「────・・?」

不思議に思った俺は、ドアノブに手をかける。不意に金属の冷たい感触が指に走り、俺は眉をしかめてそれを回した。微かな音を立て、それは回った。
「開いてる・・・・・?」
不用心だ、なんて思いつつ靴を脱ぎかけた俺は一瞬で身を固くした。リビングから漏れる光。そして―――・・女の声。
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