Present
□傍にいる理由
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.・゚ 傍にいる理由 ゚・.
「アレンくんて、ミランダのこと好きなの?」
唐突に投げられた質問を、物を食べる手を止めずに答えた。
「ええ、好きですよ」
きちんと答えたというのに、質問を投げたリナリーは呆れた顔をする。
分かっているのだ、彼女の言いたい事は。
きっと『異性として好きか』とか『恋愛対象なのか』という意味で尋ねたに違いない。というかきっとそうだ。
「私もミランダが好きだけど…そうじゃなくて、恋愛の方の『好き』を聞いてるの!」
ほら正解。
どうしてこうも、女性は恋愛話が好きなのだろう。
フォークを持つ手を止めて、苦笑する。リナリーの様子からして、徹底的に、彼女自身が納得するまで解放してもらえないかもしれない。
むう、と渋い顔をして考える。
「うーん、恋愛の『好き』では無いんですよね…」
「ミランダが困ってる時、よく助けてるじゃない」
「ほっとけない、って感じかなぁ。リナリーもそうでしょう?」
何かとドジが多いミランダは、見ているこっちがハラハラする。だから、放っておけない。
リナリーも思い当たる節があるらしく、言葉を詰まらせた。
「それに、ミランダさんは…」
目を伏せて少し雰囲気の変わったアレンに、リナリーは続きの言葉に耳を傾ける。
「ミランダさんは、僕らが此処へ連れてきてしまったようなものだから…」
彼女が気になるのは、責任感からかもしれない。
リナリーはハッとして、小さく頷いた。
「そうね…そうだよね…」
しょんぼりとうなだれるリナリーを見て、アレンは慌てて、否定するように手を横に振る。
「いやあのリナリー?別に気にしろって言ってるワケじゃありませんからね!?」
「うん、分かってる。…でも、そうよね。なるべく助けたくなるよね。ゴメンね、変な事言って」
「いいえ、分かって頂けたなら良いんです」
にこにこと微笑むと、リナリーも微笑んだ。
そして、その場は事無きを得た。
ただ一つ、話題に上がった彼女が近くにいた事を除いて。
□■□
カツ、カツンと覚束ない足音が、アレンの耳を捉える。
ああ、彼女だ。と気付いた途端、足が自然にそちらへと向かっていた。
角を曲がれば、やはりミランダがいた。しかし、沢山の本を抱えて歩いている為に顔は見えない。ふらふらと歩く彼女の姿は、やはり見ているこっちがハラハラして落ち着かない。
「ミランダさん」
近付いて、驚かさないよう穏やかな声を掛ける。声に気付いたミランダは本の横から顔を出してアレンに気付いた。
「あら、アレンくん」
「大変そうですね、僕が持ちますよ」
「あ、でも…私が頼まれた事だから…」
「じゃあ半分。ね?」
「あ…」
戸惑う彼女から無理矢理本を奪う。半分より少し多く。
勿論ミランダはそれに気付いたけれど、彼のさりげない優しさに甘える事にし、申し訳なさそうに笑った。
「ありがとう。お願いね」
「はい!書庫ですか?」
「ええ、行きましょう」
それから二人は他愛もない話をして書庫へと向かった。