※ほのぼの目指しますが、途中で話が少し暗くなります。
見上げる空はスッキリと青くて、その空を鷹が気持ちよさそうに優雅に飛んでいるのが見える。
今日はいい天気だ。
太陽も丁度いいぐらい温かくて、風も心地いい。
このまま、この草原の丘に転がって寝てしまいたい。
いつもの俺ならそうするんだけど、今日はそういうわけにはいかない。
だって、今日はなんだって、あの子の誕生日だから。
今、村長の家ではパーティの準備を村の皆でしているところだ。
イリアは腕を振るってなにやらご馳走を作るみたいだし、タロやコリンたちはそれぞれのプレゼントを用意してあるみたいだ。
(……に対して、俺は…)
「…はぁ…」
溜め息が漏れて、空に消えていった。
実はあの子へのプレゼントがまだ、今だに決まっていない。
誕生日は今日なのに、だ。
けして、忘れていたわけじゃない。
少し前に、ハイラル城下に行って何か綺麗なアクセサリーを買おうかと、あちこちの店に行っていろいろな物を考えていたんだ。
だけど、どれも駄目なような気がした。
アクセサリーではいけないのかと思って、他にもいろいろな店に行ったのだけれども、思っているものが見つからなかった。
彼女には、どれも何か足らないような感じがしたんだ。
「…はぁ」
何回目かわからない溜め息がまた漏れて、消えていく。
どうしてこんなに悩むんだろう。
いつもならすぐに決められるのに…。
『なーに溜め息ついてんだ?』
「うわっ。ミ、ミドナか…」
いきなり目の前にミドナが現れたからビックリした。
それを見てか、ミドナはニヤリと笑った。
『…オマエにしちゃあ珍しい。今日はアイツのパーティだから気ぃ緩んでんじゃねぇの? ククッ』
「あ、あぁ。ごめん」
『………』
(重傷だな、コレは)
ふぅ、と息をつくと、ミドナは呆れた表情をした。
『オマエ…、まさかまだプレゼント決まってないのか?』
「よく、わかったな」
ワタシは、苦笑いする相棒を見て、何を今更…と話を続ける。
『オマエとは長い付き合いだからな。オマエはすぐに顔に出るんだよ、自覚しとけよ?』
ワタシはそう言ってやって、マヌケ面をしたコイツのおでこをペシ、と叩いてやった。
目を白黒させたリンクに笑いつつ、ワタシは話を続ける。
『おいおい、やめてくれよ。あれだけ城下をさ迷ったのにまだ決まってないのかよー。
あそこになかったら、こんな辺鄙(ヘンピ)な村になんかなんもないだろ』
「そうかな…」
『普通に考えてそうだろ。
まさか、オマエもしかして田舎クサイ山羊の角とかやるの? アイツの誕生日に?』
「それは…ない」
『だろ?
あーぁ、だから城下に行ったときワタシが奨めてやったのにすればよかったのに』
「あれはちょっと…」
あれはほんとうに勘弁してほしい。
何処の国の呪いの人形だって…。
あんなの渡したらあの子に勘違いされてしまう。
『で、結局どーすんだ? このままこんなところでうろうろしてても何にもなんねぇだろ』
「そうだよなぁ……」
『……』
(…これはマジやばいな)
コイツ、目がこの世界にいねぇや。どっか行っちまってる。
相棒の重症度に、ワタシはただ呆れて肩を落とした。
「…リンク? 何してるの?」
「…! どうして君がここに?」
馴染みのある声に振り返ると、そこには村長の家にいるはずのあの子がいた。
「リンクが困ってる気がしたから。何か悩んでるの?」
彼女は俺の側に歩き寄ると、俺の手をとった。
……。
「いや、何でもないよ」
「だって、リンク何か隠してるもん。例えば、今日のパーティーのこととか…」
「……ミドナ、その手にはのらないからな」
『…あっ、ばれた?』
悪戯っぽく笑うと、クルリと回って、すると彼女の姿はミドナに戻った。
「あのままプレゼントは何がいいとか言うつもりだっただろ?」
『チェッ、オマエにしては察しがいいな』
「あの子は、そんな簡単に俺に触れてこないからな」
何に遠慮しているのか。
エポナに一緒に乗るときや、日頃から彼女はあまり人に触れない。
それとも、ひょっとして俺だけなんだろうか…。
それだけは考えないようにしているのだけども。
「……はぁ」
空はこんなにいい天気なのに、どうしてこんなに不安になるんだろうか…。
……やめた、一寝入りしよ。
考えても考えても答えは出てこない。
俺は原っぱに転がって、瞼を閉じた。
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