短編

□急がなくちゃいけない理由
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※ほんわかほのぼの
ちょっぴり甘い感じで目指していきます









(……暑いっ)

ガバッ、と起き上がって、被っていた布団を払いのけた。

ジトジトとした湿気が、お風呂上がりの私の肌をもっと湿らせて、なかなか眠れずにいた。

(なんでこんなに暑いかな…。せっかく宿に泊まれたからゆっくり出来ると思ってたのに)

少し汗をかいてしまっている。
お風呂、せっかく入ったばっかりなのにな…。

(外のほうが涼しいかな…。ちょっと歩いてこよう)

ふぅ、と一息ついて、立ち上がった。

『…どした?』

すると、ミドナが眠そうに私に気づいた。
寝ていたのに起こしてしまったようだ。

「あ、ごめん。起こしちゃった…。暑くてなかなか眠れないから外出てみようかなって」

『そうか…。…あんまし遠いとこ、行くなよ』

そう言って、ミドナはヒラヒラ、と手を振り、再び寝だした。

「うん。わかった」

私はドアノブに手をかけて、大きな音が出ないようにそっと閉めた。

(他に泊まってる人も、もう寝ちゃったのかな…)

廊下は、シン…と静まっていて、開いている窓から聞こえる虫の鳴く声しかしない。

(…リンクも、寝たかな)

私がいた部屋の隣にリンクは泊まっている。

(……行こ)

私は大きな足音を起てないように、薄暗い廊下を歩きだした。

誰もいない宿屋のカウンターを過ぎて、宿屋の出入口の扉を開ける。

(…まぁ、部屋の中よりマシかな)

特別涼しいってわけじゃないけれど、ふんわりと少しヒンヤリした風がある。

そういえば近くに川辺があったことを思い出して、とりあえずそこにでも行くことにした。
川辺の方が涼しそうだし。

雑草が疎らに生えている宿屋の裏を少し歩くと、サラサラと水の流れる音がしてきた。

月の明かりをたよりに宿屋の小さな塀を跨ぐと、大きめの砂利を踏む感覚が足の裏に伝わった。

(涼しい…)

ふわり、と少し冷たい風が私のほてった頬を冷ましていく。

(しばらく風に当たってよ)

ふぅ、とさっき跨いだ塀に座った時だった。


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