企画と拍手

□初詣!
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周りを見渡せば人、ひと、ヒトの波。
それもそのはず、今日は元旦であり、ここは神社なのだから当たり前といえば当たり前で。初詣に来ている人でいっぱいである。

そんな中を、キョロキョロと首を動かしながら不安げな顔をしている少女が一人。
ついさっき日付をこえて新年になったばかりのこの時間は、まだまだ冷え込んでいて暗い夜の闇が広がっている。
周りではそんな寒さを紛らわすために温かい甘酒が出店で売られていて、湯気が立ちこめていた。

少女はそんな周りの風景を見ながら、人の波に逆らえずにそのまま流されるように足を動かした。


(だーもう、どこ行ったのよお母さん!ケータイにも出ないし!)


私ちょっとあっちに行ってくるわーなんて言って離れていった母親は10分たっても戻ってこなく、仕方ないので探しに行こうと人の波に入れば、抜けることが出来なくなってしまったというわけだ。

どこに進んでいるのかもわからず、ただ押されて進むだけ。なんだか乗り物に乗った気分になり、気持ち悪くなってきた。


(うわ、ぐるぐるする……!どこに行ってるの?うわ、やべっ吐きそ…!)


その瞬間、腕をぐいっとおもいっきり引っ張られた。
もうなにがなんだかわからなかった少女は、その引っ張った人物の胸に飛び込んでしまい、しばらくそのままの状態で息を整えた。

そうしているとわざとらしいため息の後に呆れたような声が上から降ってきた。


「……まったく、君は何をやっているんですか?というかいつまでくっついているつもりです。いい加減鬱陶しいんですけど。」


固まった。その声は最近たまに話すようになったクラスメートの声と同じで。おそるおそる顔をあげれば、吸い込まれそうな蒼と赤に端整なその造り。


「…………ろくどう、くん?」


六道骸。たしかに彼だったのだ。

彼だと気がつけば、そのキレイすぎる顔が近すぎることにすぐ気づき、ばっと離れる。


「う、わ、ご、ごめん……!!」

「まぁ別にいいですけど。……なんで君はそんな死にそうな顔をしていたんですか?それはそれで面白かったですけれど。」

「いや、死にそうなって……!なんか助けてくれて嬉しいんだけど、有り難さ半減するわ!!」

「そんなこと言われましてもねぇ……?なんともまぁブサイクな顔でしたのでとても愉快でしたよ。」


いいのは顔だけかちくしょう!と心の中だけで悪態を吐く。
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