小説
□竜の子 R18
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竜人と人間の間に、俺は産まれた。
その為完全な竜人が持つ美しい銀色に輝く翼では無く、俺は真っ白な翼を持って産まれてきた。
母さんと、人間の男との間に産まれたのが、俺。
始めは皆白い翼なんて異形のものだと、冷たくあしらわれていたみたいだけれど、そのわだかまりを取り払ってくれたのは他でもない、母さんだった。
『私が産んだのだから、この子には何の責任も無いわ』
母さんの言葉に皆頷き、やがて時が経つにつれて俺の翼を気にする者などいなくなった。
俺は母さんに感謝していた。
皆から俺を守ってくれた。
でも、母さんは本当は恨んでいたんだ。
『―あの男に、お前はよく似ているわね』
『―その顔を見ていると、悲しくなって来るの…』
『ねぇ、ルカ…』
「…」
目を開くと、見慣れた天井。
ここは、マクガイル王国。
「…はぁ、」
またあの夢を見た。
化け物と言って、俺を睨む、母さんの瞳―
―竜界は長い間平和だった。
竜王は他の種族の者達をも統一し、導いた。
誰からも、崇められる存在だった。
そんなある日、一人の竜人が人間界に落とされた。
人間界の偵察を目的とした彼女は、人間の目になるべくとまらないように、行動を進めた。
しかし、ふとした気の緩みから、一人の男に見付かってしまう。
彼は彼女を監禁し、虐待した。
なんとか力を使って人間の手を離れ、竜界に戻ったものの、彼女は赤子を身籠っていた。
人間と竜人との間に望まれず誕生した子――
子供には“ルカ”と名前がつけられた。
――遥か上空――…
―竜界―
「俺、聞いたんだ。もうすぐこの村は襲われる。」
「………え?」
それは仲良くしていた竜人が発した言葉から始まった。
「占いでそう出てるんだそうだ。俺は信じちゃいないけど、大人達の間では大問題になってるらしいぜ?」
「…」
村唯一の未来予知を可能とする占師が言うには、もうすぐ村に悪魔がやってきて、跡形も無く焼き払われてしまうらしい。