小説
□白皇子クロード R18
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「こちらへどうぞ」
にっこりと極上の笑みで手を差し出すクロード。
普段ならありえない光景に唖然としつつ、俺は後方からその様子を見守る。
「…」
「私の部屋、クロードと一緒じゃないの?」
彼の手をぎゅ、と掴みながらの上目使い。
「そんな事をしたら俺の理性がもちませんから」
ね、と優しく微笑む。
「…」
ぞわわわーっと鳥肌が立つのが解った。
こんなクロード、気持ち悪すぎる。
「…ふふ、解った。じゃあ我慢するね」
そう可愛く言ったのは、遠い大帝国から来たカナリア皇女。
この度和平を結ぶ事になった二つの国の交友関係を深めるという事で少数の護衛だけを付けて遠路遥々やって来た。
彼女の御指名で、どうやらクロードがエスコートする事になったらしい。
「夕食までは時間がありますし…俺が町でも御案内しましょうか?」
「…いいの?」
俺は後方でカナリアの荷物を持ち上げる。
「お忍びですから、あまり表だった事は出来ませんけど」
それでもよければ、というクロードの提案にカナリアは飛び跳ねて喜んだ。
「嬉しい!私城下町見て回るの大好きなの!」
ぴょんぴょん、と跳ねるとクロードの腕にしがみつく。
「…」
「では、支度をしてすぐまたお迎えに上がります」
そう言いクロードが頭を下げる。
荷物を床に下ろした俺も、カナリア皇女に一礼してから部屋を出た。
「城下町に行くと側室に伝えておけ。忍びだから護衛はお前だけでいい」
「…」
「俺も注意するが、あの女の動向には気を付けろよ」
姫の御身に何かあってからでは遅いからなぁ、ククッ、といつもの嫌らしい笑い方。
「…」
「…?何だ?」
「…」
「ヘコヘコしている俺は面白いか?」
「…べ、別に…」
ただ、お前でもああいう言動出来るんだな、と。
ああしているとそれはもう
“素敵な王子様”
そのものだな、と思う。
「丁重におもてなししろとの御父上の御命令だからな」
クロードが王族のきらびやかな服の上から一平民に見えるようなマントをはおる。
「…」
「準備が出来たらあの女を連れて門まで行く。先に行って待機していろ」
「…解りました」