小説

□焼きもち R18
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――――バン!!

「!!」

突然の騒音に、夢の中から一気に現実へと引き戻された。
ベッドから落ちそうになるのを、何とか堪える。


「…?」

クロード皇子の部屋のベッドで寝ていたルカは、騒音のした方を見る。
すると彼は机に手を突き、何だか険しい表情をしていた。


「…あ、あの…」

「…」

ルカの問いには答えないまま、クロードは無言で部屋を出ていってしまった。

「…」

基本何事にも興味無さげな彼があそこまで怒りを露にしているのも珍しい。

「…ふわ」

クロードの出ていった扉をちらりと見てから、ルカは再び夢の世界へと旅立っていった。
















「…」

その日の城内は何だかおかしかった。
女官達がやたらとソワソワしているような…

キャッキャッ、と楽しそうに鏡を覗き込んでいる所に声をかけてみた。

「ねぇ、今日何かあんの?」

「あら、ルカ様」

「おはようございます」

振り返ったその顔は、やはり喜びに満ちていた。

「何かやけに騒がしくないか?」


ルカがそう言うと、あら、と口許に手を当て嬉しそうに、恥ずかしそうに言った。

「今日は、ルーク様がお見えになるんですよ」

「ルーク、様?」

「ルカ様はご存知無いかもしれないですが、ルーク様もバロン様と同じ、隣国の皇子様ですわ」

「ハイラル王国とは、丁度反対側になりますね」

「…そうなんだ、初耳…」


「バロン様とルーク様とクロード様は年が近い事もあって昔から仲良くされているんです。」

「…」

クロードに、もう一人幼馴染みがいたのか。

あいつは俺に何も話さないからな…


「…で、そのルーク皇子が何の用?」

「こないだバロン様がお見えになったのを聞いて、ルーク様も国王様に挨拶をしにいらっしゃるみたいです」

「ふぅん…」

皆、バロンの時より嬉しそうなのは気のせいだろうか?

「ルーク様はクロード様と並ぶ程のそれはそれは素晴らしい方なんですよ」

ねっ、と隣の女官を見る。

「容姿端麗、頭脳明晰もさる事ながら、私達にも気さくにお声をかけて下さって!」

「クロード様が陰なら、ルーク様は陽かしら」

やだぁ、などと言いながら顔を見合わせて笑っている。
そんなに楽しみなんだろうか…

「…」

要はクロードのもう一人の幼馴染み、か…


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