小説

□下克上
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「…ひーっ、ひひひぃ〜」



その晩、ルカは少々調子に乗っていた。

昼間、可愛い女官がクロードに告白しているシーンに出くわしてしまったのだ。




『クロード様、無礼なのは承知で申し上げます…私、私は…』






「…」

やっぱりモテるんだなぁ、と思った。
そりゃあ性格は置いといても、顔はいいし皇子だし…

文句のつけ所が無い。



「…」

それに比べて自分なんか、一兵士だし、チビだしお世辞にも格好いいとは言えない。
女の子にモテた記憶も、無い。


「うぃ〜…酒、酒は?」

「ルカ、ちょっと飲みすぎじゃねぇか?」

「後は地下の酒樽まで取りに行かないとねぇよ」

一緒に飲み交している兵士達が心配そうにルカを見る。
彼がここまでハメを外して飲むなんて珍しい、と。


「解ったよ…っ、取って…、来る」

「あ、おい…!ルカ!」

兵士の声ももう聞こえていないのか、ふらふらとルカは地下の方へ向かった。












――‐

地下へ通じる階段。
この時間だと少々薄暗くて不気味。

「…ぅ〜…」









『私、クロード様の事…!』













「ッだぁぁぁあーー!!地下が怖くて酒が飲めるかってんだどアホ!」

そういうと勢い良く一歩を踏み出す。


――――ガン!!!

が、壁におもいっきり激突した。
頭を抱えてその場にしゃがみ込む。

「いっつうぅぅ〜…吐きそ…クロードの、馬鹿野郎め…オェ…」

やべ、出る…

と口の前に手を持ってきた所で背後から声がした。






「こんな所で吐くなよ、酔っぱらい」

「…あ〜?」


すんでの所で声をかけられて、出かかっていた物が引っ込んでしまった。

振り返れば、いつもの銀髪…





「…」

「俺を馬鹿よばわりしてる奴がいるみたいなんだが…知っているか?」

「さ、さぁ〜?あちらの方へ向かったんじゃ、ないですかね?ぅへへ」

つたない喋りで誰もいない方向を指差す。
その指をクロードは掴んで立ち上がらせた。






「俺を愚弄するとはいい度胸だな。たっぷり仕置きをしてやろう」

「……ひ、ひぇ〜」

ずるずるとクロードに引っ張られ、ルカは彼の私室へと連れていかれた。



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