小説
□意地っぱり R18
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とある昼下がり。
マクガイル王国の城の外壁をぽつぽつと歩く少年が一人。
少年の名前はルカ。
竜の力を持つ彼は、その力をクロード皇子に買われ、この城の護衛を任命されていた。
城の人間はクロードの計らいによってルカを恐れる事は無くなったが、本来なら竜は人に恐れられるべき存在。
竜人が人間とあまり馴れ合おうとしないのは、人間が竜人を私益の為に利用する事が多いから。
時にはその測り知れない身体能力をこき使われ、時にはもの珍しさから売り捌かれ…
人に見付かれば、いい事は無いと言われている。
竜界では、人間を避けるようにと何度も何度も教えられる。
けれどルカは運がいいのか悪いのか、第二皇子のお陰で今、此処にいた。
「……ふわぁ、」
いい天気だなぁ…と思いつつ欠伸を一つ。
昨日もあまり寝ていない。
というか、寝かせてもらえなかった。
毎日皇子の仕事に追われ、疲れ果てているはずなのに。
昼間はこちらがかまってほしくても滅多にかまってはくれないのに、夜になると嫌でも迫って来る。
よく尽きないよなぁ、精欲……
相手をさせられるこっちの身にもなってほしい。
あまり何度もだと、次の日の護衛がままならなくなる。
「今日も平和だなぁ…」
腰をさすりながら、不意に寒気を感じた。
…寝不足かな…
うーん、と伸びをすると遅めの昼食を取るためにルカは城内へと入っていった。
「…」
クロードとルカは時間が合えば出来る限り食事を共にする。
これはクロードが決めた事。
“城の護衛”の中には、クロード専属のボディガードの役目も含まれており、二人は時間を共にする事が多かった。
「…どうした、珍しいな」
「…何が」
クロードの問掛けに、目線を手元に落としたまま答える。
「いつもなら、ガチャガチャと騒音をたてながら掻き込むだろう」
「…」
「具合でも悪いのか。…クク、馬鹿は風邪は引かないはずなんだが」
「うるせえな…俺だって食欲の無い日位あるんだよ」
ごちそうさま、と言うとルカは自分の皿を持って立ち上がった。