箱土攻novel

□疲れた時は甘いもの
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「大鳥さん。こっち判子」

二人して書類執務の途中、土方が新たな煙草に火を点けふうと一服しながら顔を上げた。

「おーぅ」

んー、と伸びをした大鳥は、ついでとばかりに大きく一つ欠伸をし。そのまま、卓上にパタリと倒れ込む。

「……判子」

横目でちらりとその様を見た土方は口先ではそう言いながらも、急ぐ事ァねェや。と天井に向かって紫煙を吹き掛ける。

「押しといていいぞ」

随分と適当な事を言いながら大鳥は上着の胸ポケットから飴玉を取り出し。
机に突っ伏したまま包みを開け口に放り込んだ。
途端に大鳥の口元から甘い香りと飴玉がカラコロと歯に当たる音がする。

書状確認する気ねぇなァと呆れながらも見ていれば、見上げた視線で大鳥は「ごめん。コレ一個しか無い」と呟いた。

「自分で買ったのか?」

知りたい訳でもなかったが、他愛ない話の糸口にと尋ねると「あぁ」と短く答えが返ってきた。

「懐かしいな」

と呟いて味わう大鳥。そうして再び沈黙が訪れた。
土方は短くなった煙草を灰皿に押し潰し大鳥を見た。飴玉が舌に絡まれカラカラ鳴っている。


「憎いじゃねぇかェ、お父さん」

「いや、思わずなぁ…」

クツクツ喉を慣らす土方に、大鳥は目を細め苦笑して

「欲しいか?」

言って大鳥は前歯で器用に飴玉を挟み、顎をしゃくるよう喉を晒した。

煙草でいがらっぽいんだ、丁度いい。土方は、大鳥の顔を覗き込むよう体勢をずらした。
誘うように眇めていた瞳が伏せられ、唇が薄く緩む。
その大鳥の口に、遠慮なく土方は親指と人差し指を突っ込んで飴玉を探り、掴み出した。

「がふっ。ちょっ」

ここは甘いキッスで口移しだろ!?何その追い剥ぎ行為!と、大鳥が目を剥きながら口元を拭い、体を起こすのを満足気に眺めながら
土方は、ぽんと飴玉を口に入れ、親指を舐めた。

「まったく君は。ウチの子だってそんなマネしないぞ」

「知るかよ」

大鳥はその手首を取ると、土方の濡れた指を舐め。
そして悪戯に笑って見せる


「手を汚すんじゃない」

「ヘイヘイ、お父さん」

掌を髪にくしゃっと押し付け土方も笑い返した。








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