京都土方攻novel

□紅葉狩り
1ページ/2ページ

秋も深まってきた京都。
木々の色は豪華絢爛に染まり。
春の華々さとまた違った美しさが人々の目を楽しませるのだろう

「寒いですね斎藤さん。早く帰って火鉢で暖まってみかん食べたい」

「寒いのとみかんは関係ないだろ」

「秋にみかんは重要ですよ」

「重要なのか?」

巡察を終え隊士達の後を沖田と連れ立って歩く斎藤が小首を傾げた

「あっ!紅葉ですよ」

沖田が目を輝かせながら小走りで一本の木の前まで駆け寄る。
人の話を聞いているのか分からないが、直ぐに話を変えるのはいつものことだ

「綺麗ですねぇ」

木を見上げ微笑む沖田の隣に斎藤も足を止めた。
同じく木を見上げると立派な紅葉の木の葉は赤々しく染まり。
時々その葉を風で散らす様が美しい

「紅葉も秋には重要ですね」

「確かに綺麗だな…副長が喜びそうだ」

小声で呟いた斎藤に沖田が軽く目を見開いた後、クスと吹き出した

「土方さんならここで一句捻るかもしれないや。今度、紅葉でも見に誘ってあげたらどうです?」

「お忙しいだろ」

「まぁそうだけど、一緒に出掛けたりしたく無いんですか?打ってつけの口実だと思うのにな」

「別に。仕方無いことだ」

それで納得してキッパリと言い切る真顔の斎藤に少し呆れながらもう一度紅葉に目線を戻した

「勿体ないですね土方さんも。こんなに綺麗なのに」

「屯所にここまで立派な紅葉は無いからな…」

と言った後、斎藤は一歩前に出て木に手を伸ばす

「どうしました?」

「届かない」

「はい?」

枝に手を伸ばす斎藤を見守る沖田に振り返りもしない。
沖田が見守り続けている中、斎藤は後退り木と間合いを置き

腰に差す刀に手を掛け目にも留まらぬ速度で抜いた

ザンッ――…

しかし木は微動だにしない。
そして、刀が鞘に収まると同時に一本の枝がドサッと斎藤の目の前に落ちた

「さすが斎藤さん。木を揺らさないで斬るなんて、お見事ですね〜っ」

「アンタも簡単に出来るだろ」

沖田が満面の笑みで手を叩くが素っ気なく返し。
落ちてきた太く長く枝と言うかその樹を抱え歩き出した

「まさか、ソレ持って帰るんですか?」

「そうだ」

「でも土方さんにあげるなら落ち葉で十分だと思いますよ」

「落ちているモノなど差し上げられるか…。枝の方が葉も沢山付いてるから副長も喜ぶ」

「……そうですか」

樹を斬られてしまった木に同情し。土方が紅葉の葉の数など気にする訳が無いとも思うが

沖田は敢えて口を慎み。土方のするであろう如何様な反応を僅かに期待し胸を踊らせた
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ