京都土方攻novel

□男心と秋空の夕立
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仕事が詰まってるらしく相手をしてくれない土方さんの布団で、何をするでもなくごろごろしていた。
大人しく待ってろ、それが一番早く終わる、と言われたからだ。正直、退屈。
煙管の煙が部屋全体に充満しているのか、仰向けになって見上げた天井は白くもやっている。
手を伸ばして意味もなくぱたぱたと扇いでみたが、視界はまったく改善されなかった。
窓を開けようにも、外はあいにくの雨。それもどしゃ降り。
でも後少しできっとからっと止むんだろう。秋の空は変わりやすいから。こんな天気が続いてもう3日目になる。
自分の体すらじめじめしている気になって、ため息をついた。晴れが好き。からっとした、晴れが。
雨うるさいな、てるてる坊主でも作ろうか。


「飽きたか」

書類に向かったままの土方さんに突然そう聞かれて、首を傾げる。
もう大分待っているのに今更どうしてと思ったけど、ふと、ため息のせいだと気付いて、さっきのため息を後悔した。

「まあ、退屈してないとは言わないですけど、そんなんでもありませんよ」

「…もう少しだ、待ってろ」

ちら、と見た土方さんは、そう言ってすぐに書類に意識をもどした。
うん、と頷いて思わず笑った。
邪魔しないように、うつ伏せになって枕に顔を押し付け、笑いを噛み殺す。
自分が気を遣って模範的な解答をしたことに土方さんは気付いたんだろう。
本当は、まだ?と聞きたかった。それを分かって、もう少しだと答えてくれた。

笑いの発作はどうにか抑えて、首を回して顔だけ土方さんの方を向く。
真面目な横顔。浮ついたことには興味ない、みたいな顔をしているくせに、色んなことに慣れていて、私の嘘もすぐ見抜く。
それでも、互いの踏み込んではいけないところはとてもよく知っていて、境界線ギリギリで黙って、笑っくれている。
そういうところ、すきだなあ。と考えて、胸のあたりがじわりと暖かくなる。
顔がにへと緩むのがわかった。慌てて土方さんから顔を隠すように寝返りを打って背を向ける。
右を下にして丸まると、いつも寝ているときの姿勢で急に眠たくなってきた。
むしろ寝てたほうが土方さんも気にならないんじゃないか、と今ごろ気付いて、そのまま眠気に身を任せることにした。
起きたら、そして土方さんの仕事が終わってたら、
そういうところが好きだって言おう。
それから、どういうところが好き?って聞こう。

ふっと意識が沈んで、雨の音も届かなくなった。










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