Paordy-novel

□La mort du petit cheval
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映画を見る!ある日の夕刻、そう言って部屋に帰って来た野村は肩から少し大きめのボストンバックを下げ、まるで部活帰りだ。

「なぁ…何本見る気だ」

テーブルの上に積み上げられていく、新旧問わずのDVDの山。レンタル料金を聞くのも恐ろしい。

「とりあえず見られるだけ見るぞ!何からがいい?」

「見られるだけって、タイムリミットはいつだよ」

「んー、特に決めてねぇけど。オールナイトで眠くなるまで?」

「おやすみ。」

「早ぇよっ!!」

ひらひらっと手を振り自分に背を向けベットへと逃げ足を決めた相馬に、流石と言うべきか素早さで、野村はその体を抱き締め腕の中へと捉えた。

「せっかく借りてきたんだから一緒に見ようぜ」

「俺は頼んでない」

相馬の肩に顎を乗せ甘える仕草を見せても効果はナシ。それどころか、冷たくあしらわれるばかりだ。

「AVもあるぞ?中島のお勧めだってよ」

「知るか、一人で見てろ」

「相馬は俺が一人でヌいててもいいのか?」

「あぁ、どうでもいい」

呆れ返った相馬の冷たい視線が野村を射ぬく。
妬いて欲しかったのに、と残念に思いながらも野村は、恋人から出たその言葉に口元にはゆったりと弧を描き、相馬を離してバックの中を漁り始める。

「なんだよ」

「それでは、俺の好きにさせてもらいマス」

「はっ?」

カッシャン。


「え、うわっ!?」

相馬の両手首には、こんなことでもない限り体験できないであろう、手錠ががっしりとはめられた。

「ぉおおお前…っ、」

「因みにソレが中島のお勧めってやつだ。淫乱な婦人警官を逆逮捕。的な?」

拘束プレイ?と笑う野村を今すぐ通報して本物の手錠を掛けてもらいたい相馬など知らぬ素振りで、野村は鼻唄まで奏でている

「一人よりも二人の方が色々イイよな」

「なっ!…ちょ、ちょっと待て!そういう意味での好きにしろじゃっ」

「ベッドがいいか?床か?相馬が選んでいいぜ?」

「わ、わかったっ!よし、映画見よう!なっ?!」

「あ?AV見てぇの?しょうがねぇなぁ〜」

「ちっがぁぁう!!…わわわ…の、野村?おいっ、と…とりあえず膝の上に座らせるのは止めろ」

「あぁ、すぐに横にしてやっから心配すんな」

「そんな心配するかっ!」

「はい、再生〜」

「お、おいっ!おまっ人の話を聞けよッ!!」

どちらにしろ、相馬にとって長い夜になるのは、決定のようで。どうやら今宵も野村の一人勝ち。



La mort du petit cheval
(万事休す)






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