箱館他CP

□serene sky
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部屋の前に着いて、ドアを開けようとしたら小さな紙が張り付いているのに気が付いた。

「なんだこりゃ」

指で挟んで力を入れれば容易に剥がれたそれに、思わず感心する。よくもまあ風に飛ばされずにいたものだ。
手の平サイズのメモ帳に、ごく一部では珍重している鉛筆でだろう少し太めの線にも関わらず小さく書かれた文字。
それでいて読み辛さはないそれは、けれど女の子の書くものとは違っていた。
まあ海の仕事は男社会。身近に女の子は居ないのだけど


「えー、と?…はぁあ?」

羅列を最後まで目で追った後、口から出たのは溜め息とも呆れともとれる音。
先も言った通りこれは女の子の書いたものでは、ない。決してない。
断言できるのは、最後に書かれた名前からもこれの差出人が男であることは明確だ。
にも関わらず書かれる内容といえば、なんというか、告白とも取れるもの。


「悪戯か…?」

「悪戯じゃねぇよっ!」

「っ…」


暇な奴がいるものだと零した科白を遮って、どこからともなく声が飛んで来た。
否定を示したそれは紛れも無く、男の声。いや、男というにはまだ若く、自分とさして年が変わらないのが知れる。
その確証は、通路の影から現れた姿を目に映したことで得られた。
無造作に束ねられたバサバサ揺れる髪はわざとではなく、癖なのだろう。その下のまだ若さ感じさせる少し日焼けした顔は歪み、己の失態を悔いていた。


「う、あっあのっ…悪ぃ」

「…コレ…お前?」

「えと……あぁ…俺…」

握り潰しかけた小さな紙を顔の高さまで掲げて見せれば、目の前の表情が複雑なものに変わる。
なんとも非常に分かりやすいタイプだと、顔には出さずに思った。
元々会うつもりがなかったのは、この手紙からも察せる。
それでも近くにいたのは、やはり悪戯だと疑われるのが嫌だったからか、思いの外自分の戻りが早かったせいか、どちらなのかは彼にしかわからない。


「で…?どういう意味か、聞いてもいいか?」

「それは…、読んでもらった通り…なんだが…」

「読んだ通り、ね…」



愛の告白、という意味か。
頬を指で掻けば、困り顔の青年は俯き、まるで断罪を待つようだと思った。


「俺と、話したことあったか?」

「…直接…は、ない。ない、けど…、見てた」

「…ふぅん……あっそ」


まるで敵でも問い詰めてる気分なのは、気のせいではない。けれど、内にわくこの感情は、現場では決して味わえないものだ。
うなだれた頭に、覚えず滲んでしまった笑みが見えなくてよかったと胸を撫で下ろす。


まさか、向こうからやってくるとは思わなかった。

さて。突き放されると覚悟している彼は、同じような内容を自分が口答した後、
いつも遠巻きに見ていたあの眩しい笑顔を、今度こそ目の前で見せてくれるだろうか。
まずはその情けない顔を上げてもらうべく、漸く知ることが出来た名前を、高鳴る鼓動のまま音にした。







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さて、これはストーカーに分類されるんだろうか(笑)




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