箱館他CP

□I don't just love her.
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まだ日が完全に出ないうちに目が覚めた。
真ん前にはタロさんの顔。寝顔もなかなかの男前だ。しかしそれよりも気になったのは尿意だ。俺は布団、そしてタロさんの腕の中にいる。まぁ心地いいわけだが、しかし尿意。
厠へ行きたいが、この暖かい腕と布団の中から出るのは嫌だった。
今が一番幸せな時だ。これをぶち壊そうとする尿意がとても憎々しい。
きっと昨日がぶ飲みした酒が外に出たがっているのだ。つまり自業自得なわけだが、しかし出たくない。
しかし尿意。くそう。俺の体と想いの矛盾も知らずにすうすう寝息を立てているタロさんがなんかムカついてペシペシ頬を叩く。
目を少し開けたが、なにと文句を言いながらまた目を閉じた。この尿意を伝えると、奴は俺の上に乗っていた腕を離し俺を解放した。
ほほう行ってこいと。いやいやでもさ。

「布団から出たくない」

「知らない。早く行けば」

ごろりと寝返り打ってタロさんは俺に背を向ける。
うわ。冷てぇ。さっきまで俺を包んでいたじゃないか。なのに、再びすうすう寝始めやがるもんだから着流しをぐいぐい引っ張る。

「タロさんも起きろ。一人だけ布団の中はズルい」

「んー」

「起きろってば」

「んー…」

「タロさん」

「ん…」

「タロさーん」

「………」

「…寝たなコノヤロー」

そう言えば、土方くんなども寝起きが悪いようだが、ここに居る中性的な色男はどれも寝起きが悪い。美男はそんなモノなのだろうか。いや、釜さんはそうでもないな。伊庭くんや春日さんはどうなんだろ…って、
そんな事よりも今は己の事だ。とにかくズルい。布団から出て厠に行くめんどくささ。冷えた室内。そんな中で、タロさんは布団の中でぬくぬくだと?ズルい。
しかしぐだぐだ言っている暇もない。迫り来る尿意。くそ。
仕方なく布団から出たものの、やっぱり腹立つ。
もうムカついて仕方無くてタロさんの足元に掛かってる布団を捲って部屋を出た。足冷えろバーカ。





厠に行って、戻って来るとタロさんは足ごとすっぽり布団の中に入っていた。
チッ。冷えたら良かったのに。
わざとらしく布団を思いきり捲ってまた寝転ぶ。タロさんは猫みたいに体を丸めて、ゆっくり目を開けた。

「寒。」

「うん」

「行ってきた?」

「うん」

「おかえり」

「…うん」

またタロさんは目を瞑る。捲った布団を肩までしっかり二人が被るように戻した。腕、って言うとごそごそして俺はまたタロさんの腕に包まれて、今度こそ寝た










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