箱館他CP

□想うほど遠くに
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古屋さんが久々に森から箱館入りをしたので、総裁と高松医院長の3人でランチミーティング(只の団欒)をしていました。


高「釜さんご馳走さま。久々に兄さんとゆっくり出来て嬉しいよ」

古「あぁ、お前も変わり無くて安心した。これでまた心置き無く鷲ノ木に戻れるな」

高「…せっかく日本に帰って来て再会したのに、どうしてこう私達がまた離ればなれじゃなきゃいけないのかな?ね、釜さん」

榎「…うん。ごめん」←?

古「はは、総裁に言っても仕方無いだろ?それぞれ役目が有るんだ。権はホントに俺が好きだなー」

高「当たり前でしょう」

榎(当たり前…?)

高「私は昔、勝次兄さんとずっと一緒に居るって約束したんです」

古「おー、言ってたなぁ。ちゃんと覚えてるよ。小さい頃なんて『兄さんのお嫁さんになる!』ってのが、お前の口癖だもんな」

榎「ふ、ふ〜ん…」

古「その時の婚姻契約書もちゃんと持ってるぞ。ホラ、ここに」

榎(!?)

高「良かった。まだ持ってて下さったんですね」

古「あの時は、やけに熱心に字を習い始めたと思ったら、コレを荷物に紛れ込ませてんだから驚いたさ」

高「長崎で医者になるとか急に村を出て行くからです」

榎(契約書って…書く方も書く方だけど、持ってる方も持ってる方だ…)

古「まさかコレを確認しに、江戸まで追っ掛けて来るとは思いもしなかったぞ」

高「思いもしなかったのは私ですよ。兄さんってば軍人になってるんだもん。だから私が仕方無く代わりに適塾入って、フランスまで行ったんだから」

榎「え、仕方無いからってフランスまで行って来たの?仕方無く医者になったの…?」

高「兄さんに相応しい人間になる為だよ。まぁ、挙式は向こうでしたいと思ってたから色んな教会視察も出来たし、留学は一石二鳥だったけど」

榎(…本気?)

高「だから医者はあくまでも通過点で。その目標は、まだ諦めた訳ではありませんからね。勝次兄さん」

榎(…本気だ。)

古「はは、相変わらず面白いな権の話しは。一度言い出したら絶対ブレ無いのも変わらないよなぁ」

榎「いや、古屋さん。もっと言うべき事があるんじゃないのかな…?」

高「そーだ!せっかくその契約書もあるし、釜さんが婚姻届けとして受理してよ。法律や憲法でも造って、認めてくれないかな?」

榎「マジでっ!?でもさ、それはちょっと…私の一存じゃ無くても無理かも…」

高「釜さんと私の仲だよ?きっと何とか出来るよね」

榎「出来ない出来ない!!さすがの総裁でも出来ない事はいっぱいあるからね!それに、確か古屋さん既婚してんじゃ…」

古「コラ権平。総裁をあまり困らせるんじゃない」

高「チッ、せっかく夢が叶うチャンスだと思ったんですけどね」

古「舌打ちは癖になるから止めるんだ。コレは俺が肌身離さず持ってるんだぞ。受理されて堪るか」

高「もぅ兄さんったら。それじゃいつまでも一緒になれないではありませんか」

古「今更そんな事を誰かに認めさせなくても、俺達は立派に兄弟だ。それだけは何がどうであれ揺るがないだろ…?」

古屋は穏やかに笑い高松の頭に掌を翳した。

その掌の暖かさは、やはり幼少の頃から何も変わらないな。と
高松は掌の先にある兄の顔を見詰める。

「それじゃ総裁、日が暮れる前に向こうへ戻る」

「ご苦労様でした。気をつけて」

「権、またな。無理はするなよ」

「えぇ。兄さんも…」

閉じられた扉を頬杖を付き、ただ見続ける高松の横顔を榎本は伺う

「血が繋がってるだけで、充分じゃ無い?」

横目を向けて聞く榎本に、高松は眼を細め微笑み返すだけだ。

何よりも堅く互いが互いである限り、けして揺るがぬ事が無いその肉親の血。
そんな御立派な絆があるからこそ、抱く想いが行き場を無くす。

それなら、肉親で無ければ良かったのか、と思うのもなにか違う。
あの兄が居たからこそ、こうして今の己が存在し。
近しい距離に在る事が出来ているのは紛れも無く事実だ。


高松はそっぽを向き拗ねたよう唇を尖らせた

「アレと同じ事を書くからさ。釜さん印鑑押してくれない?」

「えー?そんな勝手な事したら怒られるって」

ぽつり溢し、明後日の方向へ極々小さく漏らした高松の溜め息は、榎本の笑い声に掻き消された








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