榎本他CP
□ひざまくら
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細長いクセに意外にも筋肉質で硬く、服には煙草の匂いが染み付いているようで、
女性の物とはまるで違う。と当然のような事を、
ぼんやり考えてみる
見上げると、そこは白い。
(別に遮っている訳では無いけれど)手にしている書類が翳されている
「そのまま寝ても構いませんよ。運びますから」
白い紙の裏側から聞こえてきた
「硬い」
「スミマセンね。贅沢は言わないで下さいよ」
勝手に膝を借りておいて、不平まで述べて、我ながら理不尽なのに、謝られてしまった。
そのうえ、ゆっくり髪を撫でられる。それも長く刀を扱う硬い指先で、似合わず繊細な動きをして慈しむよう触れてくる
「御自身でベット行かれます?」
その言葉は静かに目を綴じて黙止した。手元の紙を僅かにずらし見下ろしてくるのも、無視。
すると、やれやれと小さく息を吐く音がする
髪を撫でる掌も、耳に程好く響く低い声も、こう触れる体にも、
労るような気遣いや言葉にも、心地よい温もりと安心感を得る。
全てを許されていると言う事を、実感する。
そして、それが心内を擽るようで、とてもムズムズとこそばゆい。
「タロさん、文句言わないの?」
脈略も無くポツリ漏らした言葉に、指先の動きが止まった。
そんな困惑の気配に目を開けて見上げると、意に反して
柔く穏やかに微笑う顔があった
「貴方が好きだから。と答えたら、満足してもらえますか?」
そう言って、再び感触を確かめるよう髪を梳くわれ。
仄かに上気した頬を誤魔化す為に横向きに長椅子へ沈む
「おやすみなさい」と言葉の、
やっぱりどこまでも優しげな声色に、擽ったい思いだけども満足しておく事にした。
終