榎本他CP
□Let's クッキング
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「艦将」
「……。」
「……榎本艦将。」
「…………。」
「…………釜さん」
「……………煩い」
「拗ねてる?それとも怒ってる?」
「両方違う」
「じゃあどっちでもいいけど。取り合えず、手貸して?」
「……なんで」
「何でって。何でも無いと言い張るの?そのシャツに付いてるのも、包丁に付いてるのも、まな板に付いてるのも、全てケチャップだとでも言うわけ?」
「……そ」
「『そうだ』なんて冗談でも言ったら怒るよ。そもそも、開陽にケチャップは積んでない筈だけど」
「………。」
「ね、釜さん。手」
「……大袈裟。こんなの傷の内に入らないし」
「戦場と比べちゃダメ。菌が入ると大変だし、手当てはしないと」
「…っ、……」
「あ、ゴメン。滲みた?」
「……クソも痛くない。」
「はいはい、ごめんよ。出血してるわりには傷浅いみたいだね」
「…………。」
「ねぇ釜さん、次に料理する時は僕を呼んでよ。手伝うからさ」
「……沢さんってホント、心配性でお節介だよね」
「いいや、その方が効率的でしょう?」
「………。」
「それに、艦将が思い遣りで船員に手料理を振る舞おうって時に、黙って見てる訳にはいかないね」
「副艦だから?」
「もちろん、そうだよ」
そう笑って誤魔化さず、
例えどんな些細な事でも、貴方が傷付く事が我慢ならない。
と、立場を弁えていない本心を伝える事が出来たとしたら、
君はどう反応するだろうか。
「はい、コレでいいかな。暫くあまり手は濡らさないでよ」
「ん…、ありがと。」
「どういたしまして」
今は、この距離と、立ち位置と、居場所を、手放す訳にも壊す訳にもいかないけどね
「さて、それじゃあ釜さんが切った野菜でソップでも作ろうか。その前に少し片付けるから待ってて」
「…………臆病者、…」
「ん?…ソップ嫌?」
「別に、それでいいよ」
「………釜さん」
「なに?」
「…ううん、なんでもない」
(どうせ僕は臆病者さ。)
終