榎本他CP
□適材適所
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「具体的には、どうするつもりですか?未開の土地ですから如何様にも成りますよね」
榎本との友情を改めて再確認し。
この榎本の為なら極寒の地ですらも苦にならないで、
雪を掻き分け路を築く事に寧ろ喜びすら感じられた
沢は高ぶる気持ちを押さえきれずに
例えるならば、手宮の土地を手当たり次第に購入し一つの町を築き上げた榎本の様な所業を思い浮かべていたのだが…
「ん―…好きな様にしちゃって良いよ」
榎本から平然と出たのは余りにも酷な言葉だった
「好きな様にって…またそんな」
「だって、まだそこまで考えて無いんだもん」
「まったく…貴方って人は。取り敢えず開拓着手したいわけですか」
「そう言うモノは早い内から手を着ければ、少なからず損はしないだろうからな」
「松平さんまで…それはそうかもしれませんけどね…」
前髪を掻き握り溜め息を漏らした沢の顔を、真横から榎本が覗き込む
「行くの止める?」
「……今更、止める訳にはいかないでしょう。隊の編成を土方さんに無理言って、お願いしたばかりだし」
「さっすが!」
こんな時、呆れながらも榎本の思い付きに振り回されてやるのが沢太郎左衛門と言う男の人柄だ
「はい、これ地図ね。いまの時期は普通の人間なら凍死確実だから、それだけは気を付けて」
「………。」
鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌な榎本から次々と地図や方位計やらが渡される
この豪雪地帯の更に北。
薪すらも湿気り民族人すらも立ち入らない場所に投げ出される訳だ。
並大抵の覚悟では通用しない
「アイスクリームだと思って雪でも食べれば餓えは凌げるって」
「嫌ですよ。アイスクリームを冒涜しないで下さい。なんでそんな惨めな事しなきゃならないんですか」
「どっちも氷じゃん」
「氷は氷でも別物です。…って、松平さん他人事だと思って笑わないで下さいません?」
「まぁ取り敢えず適材適所だと思って気を付けて」
「気を付けるも何もありませんよ」
「人類と遭遇出来れば奇跡だね」
肩を震わせながら微笑する松平と、何がそんなに楽しいのか分からないが満面の笑みの榎本に、
底知れない呆れを感じる
しかし、付き合いが長い分だけ報われる。
こう言うヤツだと言う諦めがあるからだ
「向こうには盛岡藩の陣屋があるそうですが…」
当時、盛岡藩の警備地域は渡島半島から襟裳岬まで箱館に本陣を置き、八雲、長万部などに主張陣屋を建築していた
「そこまで辿り着ければ、の話しだけどさ。冬さえ越せればいいでしょ」
簡単に言い捨てる長官だが、何れ程の苦労が待ち受けているのだろうか
「…まぁ、建物さえあれば何とか成るかもしれません早速、出立の支度します」