榎本他CP

□適材適所
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「え―…室蘭…ですか?」

沢は己の耳を疑った。

自分の思い過ごしでなければ長官席に座る親友である上司は、
いま自分にこう言ったのだ

「そう、あの室蘭に行って来て。その為の開拓奉行でしょ」

確かに、榎本の真意は蝦夷の開拓事業

開拓奉行である沢太郎左衛門の仕事はその先遣だ。
箱館には数々の猛将、最強を誇る海軍があるのだから

心置き無く主張して来い。
と言う事だろう。

沢は、いま初めて任務先を告げられた

「箱館なら大丈夫だからさ。動きがあったらちゃんと連絡もするし」

「はぁ…」

長官席で満面の笑みを浮かべる榎本は、何も驚く様な事は何一つ言っていないのだが

沢の心に何かが引っ掛かる

「暫く戦地を離れて休むといいのでは?…皆もそう思って開拓奉行に選出したんだろ」

ソファーの向かい側で優雅に煙草を吹かす松平が微笑む

榎本と同じく、誕生から全てを見てきた開陽丸を我が子の様に沢も思っていたのだ。
その開陽丸が先月あの様な結末を向かえた事に対し、
この二人の痛恨の思いは誰にも理解出来ないだろう

開陽が沈没と言う結末さえ向かえなければ、おそらく箱館を離れる事は無かったのでは…
と沢も納得しているくらいだった


榎本は椅子か立ち上がると、ソファーに座る沢の横へ腰を降ろす

「向こうなら、箱館よりかは落ち着けるよ」

「…ありがとう釜さん」

「いいって」

親友の気遣いに言葉を詰まらせる沢の肩に手を乗せた。
まさしく、長年連れ添った親友同士の友情を確かめ合うかのように
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