榎本他CP

□fancy free
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僕には気になる子がいる。
あ、ここで勘違いを起こさないで欲しい。気になる子と言っても女の子ではない。
同じ事に興味があって、同じ塾に通い始め暫く経った頃に僕は彼に、気恥ずかしながらも一目惚れってモノをした
。それから至って交友は順調だ。順風満帆な青春を謳歌していると言ってもいい。
そんな彼と今僕は、本屋に来ている。
學門所帰り。俗に言う帰宅デートと云うヤツ。
しかし僕と彼は至って普通の交友関係にある。


「欲しい本あった?」

「ん、コレかコレで悩んでる」

彼の前には今月入ったと言うらしい西洋文学書。
予算的に買えるのは一冊だからどちらにするか迷う…、とぶつぶつ言う姿に苦笑いし、僕は一冊を手に取った。
僕より頭1個分ほど小さな彼がキョトンとした顔で見上げてくる。

「こっちは僕が買うから、君はそれを買いなよ」

「え、…」

「僕も両方気になってたんだ。読み終わったら交換しようよ?ね?」

そう笑いかけると、彼はくしゃっと顔を歪め、目元を染めながら顔を反らした。
小さな声で、ありがと…、だなんて呟き後を付いてくる。
そんな彼が可愛くて、僕はつい幸せだと微笑んだ。


「この人の両方とも面白いよね。単語を覚えるにしても参考書はどうせ読むなら面白い方がいいし」

帰り道、いつも通りの顔をしているつもりなんだろうけど、明らかに嬉しさが滲み出ている表情の彼。
僕が話を振ると更に嬉しそうな顔をして見上げてくる。
可愛いなぁ。


「この作品、昔から好きなんだよね!」

「うん。」

楽しそうに話す彼を抱きしめたくなるけれど、残念ながら僕達はまだそんな微笑ましい関係ではない。
ここで行動してしまうと照れ隠しに機嫌が悪くなり、先に帰ってしまうだろう。それは嫌だから笑顔で欲望を隠し我慢。
あぁでも目を輝かせて好きな作品について語る彼は、とても愛らしい。
頑張れ、僕の理性。


「…早く手を出したいよ」

「ん?そうそう、次はあのシリーズに手を出したいんだけどさ!」

「あぁうん。面白いって言われてるもんね」

まだ僕のものじゃない君の仕草一つ一つを、こっそり目で追いかける。
その仕草が全部僕のものになる日は、そう遠くないって、思ってもいいかな?


(それでさっ…)

(うん。ねぇ、もっとその話聞きたいから家に行っていい?)

(別にいいけど?沢さんもやっとコレの魅力に感付いたんだ。うんうん。)


……きっかけゲット!







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