榎本他CP

□幸せの伝染
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港を散歩していたら名前を呼ばれて、振り向いたと同時に抱きつかれた。
驚いて、でも視界でチラチラと潮風に揺れる明るい髪色に安心した。

「こんにちは、荒井さん」

背中を軽く叩くと彼は笑って俺から離れた。
ハグで挨拶。彼らしい。
チューもしてくれたら良かったのに。とか思ったり。
改めて彼の顔を見ると、なんだか今日はにこやかでとても楽しそう。
いいことでもあったのか聞くと、よくぞ聞いてくれたとばかり俺の肩をポンポン叩く。

「今日ね、上手くいった」

仕事が順調に進んだとか。
ああ、だから港に来てるんだ。じゃあ、日頃の労いに何か奢りますよと言うと、彼は子どものように喜んで辺りを見渡した。
ていうかこれが狙いで呼び止められたんだろうな。彼らしい。
彼は、あれがいい!と遠くを差した。指の先にあるのはバーで、洋館の前は昼間にも関わらない外国人で賑わっている。
俺の腕をぐいぐい引っ張って歩いてく。この人の感覚はやっぱり外国人と一緒なんだろう。

「荒井さん、ホットワインがいい」

メニューを見る以前に目をキラキラさせた。
呑めない自分からすると、こんなものでテンションを上げられるなんて不思議だが。彼らしい。

「好きなもの頼みなよ」

「そう?悪いね。すいませーん、シャルドネ赤とロワールの良いの有れば開けて、あとこっちにはココア」

「…うん。まあ、いいや」

まさか2本も。っていうかホットワインって言ったのに。てっきりその一杯程度かと思ったから少し驚いた。
2本も空けるのかな。まあ、彼が喜んでくれるならいいけど。
彼はさっそくコルクを捻りグラスの赤い液をまるで水のように飲み干した。
自分は届いたココアに取り敢えずたっぷり砂糖を入れて溶かす。甘い匂い。これは俺らしいかも。
俺はまだ海にいるけど、彼は陸に降りて色んな事をしてる。けども、嬉しそうな顔を見ていると漂ってくる潮の匂いは。彼らしい。

「楽しい?」

「うん?美味い、これ」

「それは良かった」

「ん、ありがとう」

暖まって血色がいい顔で彼は笑った。彼らしい。










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