榎本他CP

□見つめてたのは一瞬じゃない
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寝台に寝そべりながら煙管を燻らせ。紫煙が揺れる様を目で追う。


「寝ながらとは、感心しませんね」

不意に聞こえた声に榎本は億劫そうに振り返った。
さっきまで床を共にしていた相手が、目を逆さ三日月にして椅子に腰掛け頬杖をつきながらこっちを見ていた。

「せめて起き上がってはどうですか?」

「誰かさんのせいで、起き上がるの辛いだけ」

くくっと喉の奥で笑って言葉を続ける。

「心配しなくても、シーツは焦がさないよ」

松平は軽く肩を竦め、それ以上煙管については何も言わなかった。

「何か羽織ってはいかがですか。風邪ひきますよ」

立ち上がり、襦袢を手に取りベットに近寄り。情時の痕が色濃く残る体にそっとそれをかけた。

「さっきは乱暴だったクセに、いまさら優しくしてもムダ」

「貴方に風邪をひかれたら困るからですよ」

何でもないように言う松平に榎本はそれもそうだと笑って、
煙管を銜えようとした時、手首を掴まれた。

「ん?」

松平は掴んだ手首を自分の方へ寄せ、煙管を銜える。
端整な横顔が目に入り、どきりとする。
松平が煙管を銜える様はあまりに似合う。
煙を吐き出し、榎本の顔を見てにやりと笑った。

「見惚れましたか?」

その通りだ。だがそれを言うのは少し悔しくて。

「まさか」

そう返せば喉の奥で笑われた。

「素直でない」

お見通しかと少し膨れてみれば、口付けられる。
煙の苦い味がした。
薄目で松平の顔を見てみれば、切れ長の目と目が合う。口を放すと相手は薄く笑った。

「…接吻の時は、目を瞑るものですよ」

「タロさんに言われたくない」

もう一度…今度は目を閉じて接吻する。
体の奥がじわりと疼いた。
それに気付いたのか松平は口を放して笑む。

「…もう一度?」

耳元で囁かれた言葉の意味を的確に読み取り、頷く。
煙管を取り上げられ、それは火を消され机に置かれた

まだ残る煙が漂う様を見ながら、また松平に溺れていく。










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