榎本他CP
□Is dat alles?
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さっきまで呑んでたバーの前で、酒も手伝い、つい熱くなって軽く言い合った。
それでも最後は笑ってそれじゃあと彼は僕に背を向けた。
ゆっくり歩いていく背中を僕はじっと見た。
暗闇で、異国の景色の中に目立つ一際低い背中がだんだん小さくなっていく、というのを想像するとなんだか寂しくなった。
「送ってこうか」
気付いたらそんなことを口にしていた。彼は僕の方に振り返って、笑った。
「いいよ。男なんだから」
知らない道でも無いし。と、彼は肩を一度上下に揺らした。
「…そう」
「うん」
「そうだな」
じゃあ、とまた彼は歩き出した。僕も反対の方向へ足を進める。
ああ。なんだか後悔。
送ってこうか。言いたかったことはそうじゃなくて、「もう少しだけ一緒にいたい」って、そう言いたかったのに。
なんで言えなかったんだろうか。恥ずかしいから?笑われるかと恐れたのだろうか。
結局のところ笑われたけれど。僕はまた足を止めて振り返った。彼の姿はもう見えなかった。
終
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