土方受箱novel
□Please Kiss me!
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「ちくしょ…何だって俺がこんな目に…」
ぶつくさ文句でも言ってないといられない土方。
何故土方なのかなど、当然誰もが土方と親密に成りたいが故だ。
そんな事を思いも寄らないのは土方本人だけで、
その土方は、こんな事をするくらい体力が有り余ってるなら諸隊対向で格闘技戦でもすりゃ鍛練にもなるだろうし…。と思う訳だが
そもそも仕事はしないのか。と誰も突っ込まないのがこの政府である。
取り敢えず、土方は庁舎内を彷徨いていると、
廊下で春日と鉢合わせた
「よぉ…オメェも参加してンのか?」
聞くと、クスリと微笑んだ牡丹人。
一歩、土方へ歩み寄って来たため、土方も一歩退る。
「心外ですねぇ…そんなに脅えないで下さいよ土方さん。この僕から口付けですよ?」
喜んで頂きたい。となまじそこらの女より美しく整った顔付きで、妖艶なまでに細めた流し目で迫る春日。
「ぁあ…ま、他のオッサン共よりは(絵的に)マシかもしれねぇが…」
軽く本音をぶっちゃけながら土方は廊下の壁つたいに、じわりじわり後退し春日と距離を一定に保つ。
土方としては、余り得意な相手ではない。(得意な相手も少ないが)
確かに政府内でも指折りの綺麗に整った春日の容姿は女の艶に似ていて、それなりに手荒にする事は何故か躊躇われる。
そして己が美しいと自負しているうえに、端麗な土方に己こそが相応しいと日頃から随所で触れ回っているため、
土方も簡単には警戒を緩められない。と言うか、春日の雰囲気が只ならぬモノで恐怖を感じるのだ
ただそんな奴でも、数々の戦火を潜り抜けてきた篦棒な勇士の一人
「口付けの前に煙草とは、いけませんよ…?」
壁に背中を取られた土方の口許にある煙草を、春日のまるで白樺の枝のような細い指先が掴む。
いや、口付けって頬じゃなかったか?煙草(口内)関係無くね?
と土方は思うが、言っても春日は聞く耳を持っていそうに無い。
「…っく!」
早くもピンチに見舞われて思わず息を飲む土方。
端から見れば誰もが認める絶世の美男2人如何わしい雰囲気に耽ている様だ
そんな薔薇でも飛び交いそうな空気を、
木っ端微塵に切り裂く雄叫びが、廊下に響き渡った。
「かァ〜すゥがァアアァア!!」
「野村ぁ!よく来た!!」
土方が歓喜し。猪突猛進して来た野村は、その勢いで飛び蹴りをくりだしたが、
春日は小さく舌打ちを鳴らして軽やかに身を翻す。
「ここで会ったが百年目!テメェが副長に近付くなんざ、俺の目が黒いうちは許さねぇゼ!!」
「貴様の目がどうなろうと知るか。また性懲りも無く小賢しい邪魔を…」
柳眉をキツく寄せ、まるで鼠の死骸を見るような目で睨む春日。
野村と対峙している傍から、次々と奉行並添役…又の名を土方守衛の面々(非参加者たち)が立川を筆頭に駆け付けた
「土方先生、ここは我々にお任せを」
「おっと、そーはいかないよ」
次に声が響いたのは守衛が居る反対側から。
春日と守衛との間に割って飛び込んで来たのは春日隊の右腕を担う丸毛だ。
そして陸軍隊…又の名を春日様の愉快な下僕達(非参加者)が揃い踏みである。
「君達、才色兼備英姿颯爽眉目秀麗の我等が春日様が土方先生を見初められたのだ。何が気に食わない」
かなり上から目線の物言いな仙様こと上原仙之助。
春日に劣らず気品満ちる容姿は高飛車な文句を際立たせる。
直ぐに守衛一同から野太い野次が飛んだ。完全に煽られている
「君らが土方先生を護るのは勝手だけど、ウチの大将に危害を加えるのは頂けないなァ」
「上等だ。今日こそ白黒着けようじゃねぇか」
志士の眼で守衛一同をニヤリ微笑う丸毛。
野村も腰を低くし臨戦体勢に入った。
参加者は武器使用を認められていないが、双方とも非参加者のため光る物を手にしている。
ここに守衛VS春日隊の戦線が出来上がってしまった
両部隊を直轄している土方としては穏便に纏めたいところだが、
今日は無礼講としよう。そしてこの場を早く逃れるのが先決だ。と決断。
「テメェら、存分にヤるのは構わねぇが建物は壊すなよ!」
それが戦闘開始の合図だった。廊下で真っ向からぶつかる人を避け土方は喧騒に紛れひょいと身を退く
「土方先生っ!?ちょ、」
「春日ァ〜〜っ!!」
「野村、お前ホント目障りなんだよっっ!!!」
遂にぶち切れた春日も先ずは目先の敵に標準を変える事にした。
この争いは制限内で収まる訳も無く。ただ守衛と陸軍隊の溝を深めただけだった