土方受箱novel

□Please Kiss me!
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とある日の五稜郭箱館庁舎にて、一枚の御触れが出回った


土方歳三争奪戦in五稜郭!

ルールは至って簡単だ。
範囲は五稜郭内のみ。
武器の使用は不可。
階級問わず参加可能。
制限時間は2時間。

土方歳三陸軍奉行並へ、一早く【口付け(ただし頬)】をした者が勝者となる。


キャッチフレーズは
土方歳三は君のモノだ!!である。



五稜郭中に激震が走った。




そして、もっとも衝撃をくらったのは、他ならぬ陸軍奉行並土方歳三張本人だ。

「オイっ!!何だソレは!なんのつもりだっ!!!」

土方の怒号が響く庁舎一室。バンッと叩き上げた机越しに、その部屋の主人松平太郎を睨む。
こんな人権迫害、尊厳無視のバカ気た事を企画しそうな男は、
この広大な蝦夷を捜しても副総裁松平太郎の他には居ないからだ。
そして、やはり主催者と言うか主犯松平は上品に笑って土方を見返した

「最近は、何処の隊も組も雪掻きと土木作業の日々で意気消沈しているだろ?」

「ソレとコレと何の関係がある!?息抜きなら得意の宴会でもしてりゃいーだろうが」

「それだと呑み代が掛かる。そしてコレは既に総裁と話し合った結果だ」

「榎本さんも絡ンでんのか!?あんの野郎ォ…」

「口付けと言っても頬に妥協しただろう?そんなもの挨拶じゃないか」

「俺の意思が無視されてる時点でなにも妥協されてねぇンだよっ!!」

「君が2時間、逃げ切れば良いだけだ。それとも逃げ切る自信が無いと?」

「………。自信がねぇだと?上等だ」


やってやらァ!!と土方が意気込んでしまったもんだから、
土方歳三争奪戦五稜郭杯と相成った次第である。



そして、我等が母を勝手にネタにされ。しかも勝手に母は了解してしまったが、
どこぞの輩に争奪されてなるものかと立ち上がったのが、新選組の烈士たち。


野村「ぬぉおおおおお!!副長を奪い合うったァどー言う了見だ!!」

相馬「落ち着け野村。先生ご自身が受けて立ってしまったから仕方無い」

大野「それで俺たちは先生が生き残れるよう参加者を蹴散らすわけか。しかし、相手は隊長格やら幹部だぞ?」

安富「そんなもの関係無いね。こんな企画が発動される時点で充分に無礼講なんだから」

島田「安富の言う通りだ。どんな手段を駆使しても構わん。先生を御守りするのが我等の使命!新選組の名に賭けて、先生の頬を死守するっ!!」

ウォオオオ!!と気合い溢れる雄叫びが谺する一方で

この無礼講極まりない大会に、嬉々として手を挙げた色んな諸隊組士の参加者達が会議室に集まっている

榎本「タロさん、勝者に御褒美とか賞品は出ないの?」

松平「総裁、それはまるでご自身が勝てると言うような発言ですね」

榎本「まぁね。(自信満々)それで景品は無いの?そこも経費削減なの?」

松平「削減した訳では無く、土方くんに口付けするんですよ?そのうえに景品まで必要ですか?ホラ、景品が無くても沢山の参加者が集まってますからねぇ」

大鳥「僕はアレだぞ、部下を賭事にされて上司として黙っていられない訳で別に土方くんをどうこうしようとは考えて」

榎本「でもキスがルールだし、しないと勝てないよ?圭介もしたいの?」

大鳥「かかか釜さん何をっ…!!」

伊庭「オイラはトシさんの為なら口付けだって何だってするゼ?つーか、オイラがしなくて誰がするってンだよ」

星「はは、流石は伊庭さん。また松前を人見さんに押し付けてわざわざ来たんですね?ですが今回は俺が勝たせてもらいますよ」

春日「何を仰いますか星さん。土方さんの隣に相応しい者は、この蝦夷に僕しか居ませんよ」

松平「皆、ヤル気があって何よりだ。コレは腕が鳴りますねぇ…」

クスクスと微笑む松平は時計を見て、そろそろか。と集まった一同を見据えた

「因みに、奉行庁舎内及び五稜郭内に建立する建物に工兵隊が総動員でトラップを仕掛けたので、くれぐれも命まで落とさぬように」

榎本「ええぇっ!?いつの間にそんな事してくれちゃったの!?」

大鳥「命の危険に関わるほどなのかソレ!?まさか、ソコに金を掛けたんじゃあるまいなタロさんっ!!」

松平の不吉な発言に一同がざわめいている時


一方の土方本人は自室で、
仏頂面を更に険しくしながら紙煙草をカシカシ噛んでいた

市村「そんな顔してたら武運も逃げますよっ!これも勝負なんですから!」

土方「分ァってらァ。ただ、いま物凄く多摩に帰りたくてよォ…」

田村「先生、俺達が景気付けに先に口付けでもしてあげますよ」

土方「何だそりゃ」

田村「気持ちですよ!気持ち」

玉置「先生、ガンバって!絶対に勝ってね!」

とか言いながら擦り寄ってくる子供に、此から大量のオッサン達に擦り寄られるだろう土方は、癒される。
と言うより、何だこの可愛い奴らめ!と思ったが

市村「あ、先生。言い忘れてましたが、俺達も参加者でーすっ!」

土方「なにィっ!?」

田村「オイ!なんでバラすンだよ鉄!!このまま先生を捕まえとけばいいだろ」

市村「だって開始の合図は太鼓の音だろ?まだ始まってないから八百長じゃん」


ドーン…、ドーン…!


玉置「あ、鳴ったね!」

土方「クソ!テメェらまで追手かよっ…!!!」

群がる子供をひっぺがして土方は部屋を飛び出した

田村「チッ、逃したか」

玉置「先生すごーい足早ーい!」

市村「そんじゃさっそく俺らも追っかけようぜ!」

オー!と拳を上に翳す小姓3人組は、土方と鬼ごっこしたいが為の参戦である。


こうして土方歳三争奪戦の賽は高く投げられた。
土方の命運や如何に…!?
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