土方受箱novel

□熱は赤色
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「なぁ、オイ、これ、何してンだよ」

土方は身体中を這い擦る手に、苛つきを隠さず声を出した。
触れてくる松平の手は感触からして手袋を嵌めているのが分かる。

そして─…

「何と言われても、拘束した貴方の服を脱がしているだけでしょう」

耳許で囁く相手が嘲笑っているのも土方からは目隠しで見えないが、声色で充分に分かった。

「待てタロさん。目隠しとか必要か?何で目隠しされてんの俺」

「たまには、刺激的な情事も良いかと」

「刺激とか求めてねぇよ!ってか手まで縛ることねぇだろうが!外せ!」

「手を自由にしたら目隠し取るだろ?」

そりゃそうだ。そもそも、何でこんな事になっているのか土方は考えたが、
その間も松平の行動はどんどん進んでゆく

「オイ!タロさん!ちょ、待てって!」

「なんですか。」

「シたいのは分かった。逃げも拒みもしねぇから、取り敢えず外してくれ」

「では今日は拘束しながらシたいので、拒まないで下さい」

つまり、束縛を受け入れろ。と言う松平。
土方は怒鳴ってやろうかと口を大きく開けたが、
その時、松平が首筋に吸い付きチクリとした痛みに声が上擦った

「赤が好きだと聞きましたが、確かによくお似合いで」

吸い付いた箇所を撫でる舌先に、土方の身体は過剰に跳ねてしまう。
視覚が無いから突然の刺激には過敏になっている。
それを心底楽しむよう松平の動きも大胆さを増す。

「目隠しも鮮やかな紅い布ですよ。まぁ、貴方には見えないから惜しいが」

私だけが観ているからいいか。と松平は穏やかな口調で言いながら、目隠しの奥から瞼に口吻をした


「や、タロ、さ…タロさん!聞けっ…」

「まだ何か?」

「手袋、してんだろ。戯けンな…」

目隠しもされ手もネクタイか何か布地で縛られる土方に己の状況は伺い知れないが、
身体中をまさぐる松平の掌が素手では無いのは確かだ。
これでは自分ばかりが肌を曝しているようで不公平に思う。
何より、唯一松平が触れる掌すら手袋越しでは、熱も何も伝わらない。


「来るなら素で来な。じゃねぇと、感じられねぇ…」

挑発的に口端を歪めて見せると、直ぐに口が塞がれた。
ぶつかって来た深く貪るようなその行為は土方に息をさせない程の勢いで続く


「…っン゙、つタ、ロ、さ、苦し…」

「まったく、貴方って人は…敵いませんね」

耳朶に息が掛かる距離で鼓膜の奥まで響く低い声。
土方の背筋がゾクッと芯から奮えたが、
けして、松平に乗せられて興奮している訳でも、拘束されて悦ぶような性癖も持ち合わせていない。
あくまでも視界を奪われた事で聴覚も敏感になっているからだろう。
と土方は自己認識に努める

「あぁ…紅いうえにやはり熱い」

次に肌に触れて来た松平の掌は確かに布地では無い。
土方は密かに喉奥で笑い、重なってきた松平に身を委ねた








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