土×榎novel-SS

□human frailty
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「……あちぃ…」

「ん?」

「熱くね?少し火強すぎだろ」

「えー?そんなこと無いよ」


言いながら、ぎゅう、と抱き締めてくる彼。

熱いなら離れたらいいのに。
そして、離れてくれたら、窓を開けて雪が止んでいる外の空気を入れる事も出来るけど

胸に埋まる彼の少し見える顔は、
いつもの口調からは分から無くても、酷く切な気な顔で

自分は更に抱き返す。



「熱ぃってンだよ」

「いーじゃん、私がこうしたいから」


フン、と一つ鼻まで鳴らされた

まったく…。


だけれど直ぐに、
涙が今にも零れ出てきそうな眼で見上げられた。

強がりはここまで、らしい


感情を剥き出して成らないのは、お互い様。

そんな綺麗事と、


いま傍に居るのが、彼が心意から望む人ではなく、自分でごめんね

そんな醜い皮肉が頭で混ざる

だけど私も、自尊心が強いから綺麗事しか伝えられなくて


苦笑いで取り繕い。
目に見えては一粒も落ちていない雫を拭うよう、その頬に唇で触れた。




「アンタ、なんで泣きそうなンだよ」


「その言葉、そのまま君に返すよ」




human frailty
ニンゲンダカラ モロイ






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