土×榎novel-SS

□THE X'masファンタジスタ
1ページ/11ページ

ファンタジスタとはイタリア語のサッカー用語として使われる言葉だが。
その意味は明確な定義は無く、
パスやドリブルなどで、誰もが予測もしない芸術的なプレイをして魅了するような選手を賞賛して呼ぶ

しかし、この話はサッカーなど全く関係ありません。
時代は、日本が様々な西洋文化に侵食され始めた明治元年。
日本の暦では教師も駆け巡る師走のお話

キリスト教に於いて、イエスキリストの誕生日。
いわゆる降誕祭。
現代の日本ではその宗教的な意味合いも無く、一つのイベントとして行われつつあるChristmasが翌日に迫った、ここは箱館五稜郭

オランダ留学により西洋文化にどっぷり染まった総裁榎本が、
何故か弁天台場の一室に来ていた

「新選組全隊士に総裁命令を発令します」

珍しく深刻な面持ちで榎本は静かに呟いた。
滅多に姿を見せない総裁の榎本が、屯所に来たと言うだけで場の空気は張り詰める

いつもは新選組の全権を握る土方が居る筈の場所に、この国の主である榎本が居るのだ

逆に言えば、本来そこに居るべき土方の姿は無く。
土方の側近である守衛隊の姿も無い。
居残りの隊士達は各々ゴクリと息を飲み榎本の言葉を待つ

「これは政府の威信に関わる重要な大仕事。心して掛かる様に」

《《《はッ!!!!!》》》

政府の威信に関わるほどの任務…
そんな大役を任されると、誇りにまみれる隊士らは新選組の、その名に恥じない威勢で声を上げた

「では命を。それは―…」

「副長ぉ!発見しましたぁ!!」

「ひっ捕らえろ」

《《《副長!!!!》》》

バァァン!!!!と扉が弾かれ声を張上げる野村が踏み込んで来た。
その後には鬼気としている土方と守衛隊の面々がいる

「奉行所から脱け出しやがって。ここで何やってンだアンタは!」

「もうバレたの?!」

なぜ榎本一人が台場に居るのかと言うと、脱走癖がある榎本がどうやら勝手に単独で脱け出して来たらしい

「さっさと戻るぞ。帰ったらまずは太郎さんの拷問が待ってっからよ」

「嫌ぁあ〜〜!!」

血管を浮き立たせる土方に軽々と脇に抱えられた榎本が、手足をバタつかせ激しく抵抗する

「ちょっと待って!新選組に頼みがあって来たの!」

「頼みだと?」

泣き喚く榎本の言葉に眉を吊り上げた
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ