土×榎novel-SS
□Straβe-kiss
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突如、ダンッ!と音が響き。
書き物をしていた大鳥と土方は顔を上げた
発信源の先は部屋に踏み込んで来ていた榎本。
ソファーの上に仁王立ちして、片方の足をテーブルに上げている
「今日の差し入れは、シュトラッセです!」
「「………は?」」
二人の声が重なった。
その視線は榎本が上に高く掲げる一つの箱へ向かっている
「コラ!釜さん、テーブルに足をかけるのは行儀悪いですよ」
「いや、それより何だよソレ。つーか、そもそも何でコイツがこの部屋に居ンだよ」
大鳥が外した突っ込みを、真の突っ込み土方が代わりに行う。
榎本はソファーから降りてその箱をテーブルへ置き、大鳥と土方も差し入れと言われて何かと各々ソファーに着いた。
因みにちょこんと榎本は土方の横にくっ付く
「さっきガルトネルさんが来てね。手土産くれたから君達にもあげようと思って」
「ガルトネルさん?って、確か七飯の土地を租借したいと言ってたプロシアの…。聞いたところでは農業専門家だそうで」
「そうそう。西洋農業方で作物栽培したいとか。それで、故郷から送ってもらった果物を試しに食べて欲しいってわけ」
「で、此が異国の果物?唐辛子みてぇな色だな」
「辛くないよ。英語ではチェリーって言うやつ」
三人で覗き込む箱には、一杯に敷き詰められたサクランボ。
正に食べ頃とばかりに真っ赤に艶めく小さな粒がまるで宝石のようだ
「はい。中の種は食べないでね」
蔕を持ち、2つ並ぶそのサクランボを榎本は隣の土方へ差し出す
「うん、甘い甘い」
向かい側ではさっそく口に頬張っている大鳥が頬を綻ばせている。
それを見た土方も受け取ったサクランボを大鳥の真似して一粒口に入れてみた
小さな身は噛めば口一杯に、砂糖とは別の程好い甘味と仄かな酸っぱさが絶妙に広がる
「………旨い」
「でしょ!気に入った?」
楽し気な榎本に返事をする代わりに土方はもう一つの方のサクランボを口にして、コロコロと身と種を分けるのに苦労している。
榎本も一緒に食べ進め、その食べ易さからサクランボはあっという間に数が減っていった