土×榎novel-SS
□intention
1ページ/9ページ
空になった幾つもの徳利。
無造作にソファーへ掛けれた二着のコート。
本棚が壁を埋め尽くす洋間で、榎本は小さく溜め息を吐き出した
ベット脇にあるテーブルへ、またしても質量の無くしてしまったグラスを榎本はそっと置く。
ベットに腰掛ける位置の榎本から距離も無いが、背後から抱き抱え腰へ回されいる腕に束縛され動き難い
「あのさ…水を取りに行くから離してくれない?」
「ダーメ」
更にギュと前方にある腕の強さが増す。
まるで子供のように縋り、少しだけ間延びする語尾でそう言うのは
榎本を背後から束縛している土方だ
その顔は仄かに朱が差し、何が楽しいのかケラケラと一人笑っているのだ…
榎本は堪らず頭を抱える
榎本が思った以上に土方は下戸だった。
飲み散らかされた徳利の殆んどを榎本が消化し、土方が口にしたのは3分の1程だったろう。
なのに、一言で言えば完璧に出来上がっている有り様だ
少し飲ませ過ぎた?かと頭を捻るが、今日に限っては珍しく土方自らが進んで呑んでいた気がする
どうも榎本は自分本位の見方で平然と酒を煽り。
それに、酒が苦手と言い切る土方が付いていける筈も無く。
榎本が気付いた時には、土方は嘗て見たことも無い様な顔をしていた
「喉が痛い」
「だから水、持って来るって」
「行くなよ」
目尻を下げた眼で榎本を見たかと思えば、項に顔を埋めてクンクンと鼻を動かして甘えた仕草を見せる
酒焼けした身体を水を飲んで落ち着かせ、一寝入りでもすれば目を覚ますだろう。
次に起きた時に何を言われるか怖いが、予想だにしない事態で榎本は困惑していた
こうも土方が甘え性に成るとは眼を疑う光景だ。
嫌な気はしないにしても、榎本は居た堪れ無い。
ひっきりなしに頭を擦り寄せられ。
時には微かに首元を掠める唇の振動に、榎本は肩をすぼめた