土×榎novel-SS

□intention
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空になった幾つもの徳利。
無造作にソファーへ掛けれた二着のコート。
本棚が壁を埋め尽くす洋間で、榎本は小さく溜め息を吐き出した

ベット脇にあるテーブルへ、またしても質量の無くしてしまったグラスを榎本はそっと置く。
ベットに腰掛ける位置の榎本から距離も無いが、背後から抱き抱え腰へ回されいる腕に束縛され動き難い

「あのさ…水を取りに行くから離してくれない?」

「ダーメ」

更にギュと前方にある腕の強さが増す。
まるで子供のように縋り、少しだけ間延びする語尾でそう言うのは

榎本を背後から束縛している土方だ

その顔は仄かに朱が差し、何が楽しいのかケラケラと一人笑っているのだ…
榎本は堪らず頭を抱える


榎本が思った以上に土方は下戸だった。
飲み散らかされた徳利の殆んどを榎本が消化し、土方が口にしたのは3分の1程だったろう。
なのに、一言で言えば完璧に出来上がっている有り様だ

少し飲ませ過ぎた?かと頭を捻るが、今日に限っては珍しく土方自らが進んで呑んでいた気がする

どうも榎本は自分本位の見方で平然と酒を煽り。
それに、酒が苦手と言い切る土方が付いていける筈も無く。
榎本が気付いた時には、土方は嘗て見たことも無い様な顔をしていた

「喉が痛い」

「だから水、持って来るって」

「行くなよ」

目尻を下げた眼で榎本を見たかと思えば、項に顔を埋めてクンクンと鼻を動かして甘えた仕草を見せる

酒焼けした身体を水を飲んで落ち着かせ、一寝入りでもすれば目を覚ますだろう。
次に起きた時に何を言われるか怖いが、予想だにしない事態で榎本は困惑していた

こうも土方が甘え性に成るとは眼を疑う光景だ。
嫌な気はしないにしても、榎本は居た堪れ無い。
ひっきりなしに頭を擦り寄せられ。
時には微かに首元を掠める唇の振動に、榎本は肩をすぼめた
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