土×榎novel-SS

□太陽暦12月25日 PM7:00
1ページ/1ページ


ん?あーうん、人を待ってんの。待ち合わせだから。
相手?野暮なことは聞くもんじゃないよ?へへ。

…まぁ、そうだよね、こ…恋人?うわぁどもっちゃったよ、あはは。

いやもう全然、いいのは顔だけだって。
嗜好はといえば煙草と沢庵とか?性格は生真面目で頑固で、嫉妬深くてキレやすくて、趣味は長風呂に俳句。下戸でさー、真面目ってかいまいち面白味に欠ける感じ?
だいいち、仕事中毒だから、何よりも仕事命だから。

逢い引きもへったくれも無いよね。
何度約束をすっぽかされたか、両手両足の指じゃ足りないね。
ほら、すっぽかす理由が、忘れてたとかお姉ちゃんのいる店で飲んでたとかなら私も怒れるけどさ、あの人必ず人を使ってまで伝言はちゃんとしてくれて、残業とか急な呼び出しとか、理由を言うわけだよ。
すまなさそうにさ。
そうなると、怒るに怒れないじゃん?「…わかった」ってせいぜいふて腐れた声で言うくらいしかできないし。

…だからさ、逆に連絡がないと不安になるわけ。
悪いね、さっきからチラチラ余所見ばっかしてさ。
落ち着きない感じだよね。そう、連絡こないんだよ。もう約束の時間過ぎてんのにね。……なんかあったかな。

いや、まぁ、普通の商売ならそんなに心配しないんだけどさ。あの人、ちょっと危ない仕事してるから。
え?いやいや違うよ?やのつく方々の一員じゃありません!……まぁ、当たらずとも遠からず、かな…?
いや違う違う、攘夷志士とかそんな物騒なのじゃないって!いや物騒だけど……一応、軍人だからさ。
いやいや、何でもない。

はー、連絡こないよぉー。うん、もう一杯ちょうだい


え、彼?悪い人ではないよ。んー、優しいかな?まぁ、二人でいる時は優しくなくもない、かな。
…え?照れてないし!赤いって、そりゃ酒が入ってるからだって!いや、うん、弱くはないけど…。

ただねー、かなり嫉妬深い人だからねー、なんてゆーの?余裕ないよねー。
いや、ちょっと彼のほうが年上なんだけどさ。
私が知り合いと立ち話してるの見ただけでもうカッカしちゃって。
どーゆう間柄だとか、何を話してたんだってしつっこく聞いてきやがるし。君は私の母親ですかっての。
あ、女将さん分かる?ねー、ウザいよね、そういうの。
束縛とか独占欲とか?もうお互いいい大人なんだからさー、それぞれの親交とか生活があるでしょーよ。

はぁ?!大切にされてる?まさか、アレ過保護なだけだから。面倒見がいいので有名な人だから。
あとアレだよね、やっぱりがっつくよね。
年上だから、常にリード…主導権を握っていたいのか何なのか知らないけどさ。必死なんだよねー。
まぁそこが可愛くなくもない、とか、思わなくもない、なーんて。

ブッ、…やらしーこと聞くね。このエロ親父。噴いちゃったじゃん。
……ま、そうだね、アッチの方もがっついてきやがりますよ。
年上ってもまだ若いからね。いやいや私だって若いよまだまだ!全然負けてませんけどー。
あ、そやって意地張るから良くないの?かなー、エロいってより取っ組み合いになってるもんねー。

え?思い出し笑いなんてしてないってば!
ちょ、変なこと言わないでよ。酒が入ると顔が緩むんですー、安い酒ほどよく回るってね、あはは。
ちょ、女将さん仮にも客におしぼり投げるかなっ!?


−うん、使いも来ないや。
あ、いーのいーの、たぶんまた、背の小っさい上司に捕まって喧嘩してて上がれないとか、背の高い部下の口煩い小言聞かされてるとか、ヤンチャな部下を怒鳴ってるとか、そんなのだよ、きっと。
ね、カウンターから外見えるよね?ちょっと騒ぎとか聞こえてこない?
なんか事件起きてないか、それだけ。いや、火事とか強盗とか、起きてないよね……ハァ。
え?雪??そっか、吹雪いてないならいいけど。

もう帰ろーかなー。

うーん、いつもならとっとと帰って寝ながら待つんだけどねー。

ほら、今日ってクリスマスじゃん。

西洋のお祭りでさあ…。
あ、知ってる?へーさすが、箱館の人はわかってるねー。
うん、クリスマスってさ、誰が始めたんだか知らないけど、家族や親しいもので集まってご馳走を食べたり。サンタさんがプレゼントをくれたりして、カップルはいちゃこらしようぜコノヤローって日でしょうが。
まぁここは日本だし、自分キリスト教徒でも何でもないけどね、楽しけりゃOKじゃん。
…いや、私としてはそんな大袈裟にしたいわけじゃないよ?ましてやイチャコラしたいわけじゃないよ?
ホントだって。
………いや、そりゃ少しは期待だってしますけど?


ただ、ちょっと高級なとこで一緒にメシ食べようって程度だよ。
まぁ、彼はさ、こういうのあまり興味ないみたいだし。だから、今日も凄い渋々だったわけだし。

ハハ、そう、私はメシよりお酒が楽しみで来たんだけどね。断固ワイン派だね、私は。
こういう時はシャンパーニュのロゼとか奇をてらうより、正統派でゴージャスなのが一番だって。
ケーキ?いいねぇ。なんだかんだでワインと洋菓子のコラボは無敵だよ。本場で呑んできた私が言うんだから、間違いないって。
あはは、まーそうだよねー、女将さん。クリスマスだろうが何だろうが、美味しくお酒が呑めれば、それでいいよね。

ん?マジで軽く回ってきたかも。うん、今日はすきっ腹に飲んでるからかな。
…いや、いいよ。…せっかくの食事の前に腹膨らませちゃもったいないじゃん。
いやいや、ここの料理は美味しいって!そういう意味じゃないってば!
…もー、からかわないでよエロ親父が。

……!


うん、来たね。アレだよ。
だからアレいいのは顔だけだって。え、見たことある?いや、気のせい気のせい

…ちょ、寝たフリするから静かにしてて。待たせやがって、ちょっと遊んでやろ・・・・。


って、ちょ!なにでかい声でバラしてんのエロ親父!
うるせー黙れ。ちょ、マジお願いだから黙って、ね、枝豆あげるから。


……はぁ?何が?

ゴメンで済んだら切腹は要りません、よ。
……ふーん、あっそ。
連絡もできないくらい忙しかったんなら、今日はもういーよ。帰って寝れば?

…なんでって、約束の時間は何時でしたっけ?いーよいーよ、無理しなくて。

…待、ってなんか、いないって。

……馬っ鹿!そういうことは公共の場で言うんじゃありません。
…あーもー分かった分かった、ワインね!ワインだけはぜったい呑むからねっ!あとケーキも!

はいはい。じゃあ行きますよー。せっかくのホワイトクリスマスだしー。
…うるさいな、
君もちょっとは待たされてみなよ、バーカ。


…あーあ…なんか泣きつかれたし、行くわ。
とにかく、ワインとケーキだけは食わせてもらわないと割に合わないもんね。お勘定してー。

……え、いいの?マジで?クリスマスプレゼント?
いや、ホント箱館の人はわかってるねー。
…じゃあ、ありがとさん。
ゴチになります。アハハ、うん、また来る、はいはい、2人でゆっくりくるよ、今度ね。


…そんじゃ、メリークリスマス。







●●

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ