Paordy;Serial novel
□Treasure。04
1ページ/9ページ
暴風は唸りを上げて、吹雪と化した雪は止まない
役場の一室で向かい合わせにソファーへ掛ける土方と松平、その横に並んで座る大鳥。近くに伊庭が肘掛け部分に凭れている
ガタガタと硝子を鳴らす風の音だけが鳴り。息苦しいような空気の中で、松平から口火を切った
「話しとは?」
「アイツが来てからだ」
吸っていた煙草を灰皿へ押し宛てた丁度の時、扉が開かれ。開陽を抱いた榎本と高松が顔を出した
「お待たせしました」
「君、仕事は?」
真っ先に駆け寄り、土方の隣へ腰を降ろすと顔を覗き込こんだ。そして前方の松平達を見据える
「…皆も揃ってどうしたの?」
「俺が集めたんだ」
「なんで…?」
何があるのかと不安気に見詰める。土方は小さく息を吸い込んでから眼を伏せて、重たい口を開く
「…腹にいるガキの事だ」
いつも以上に低音な声は、物悲しさを纏う
「やっぱり、男が子供を産むのは危険らしい…」
「…―どう言うこと?」
「詳しい事は私から説明するよ。…いいかい釜さん、落ち着いて聞いてね」
眉を寄せる榎本を宥めるように肩に手を優しく添え。高松は、現段階で考えられる現状を踏まえながら。流産や早産の危険性や、出産後に及ぶ影響。全ての事を告げた
「そんな…私が始めに言い出したせいで……」
漠然と呟きを漏らした
榎本は、いの一番に悪影響を及ぼしたであろう人々の事が頭を過る
償い切れない後悔と罪悪感に苛まれ、榎本の身体が震え出す
「今はテメェの事だろっ!!」
「トシさんッ―…」
薄い撫でらかな肩を掴むと土方は声を張り上げる。眼を見開いたまま呆然とする榎本を気遣い、伊庭が制するも土方は手を離さない