キリ番

□777'
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※使用人×御曹司パラレル







「恭弥様、おはようございます。朝ですよ」

鼓膜をくすぐる優しい声に、恭弥は薄く目を開けた。




secret relation




恭弥の朝は、いつも自分付きの使用人の声で始まる。

沢田綱吉。それが、使用人の名だ。
綱吉とは、所謂恋人同士という関係だ。もちろん周囲には秘密なのだが。

年は恭弥の一つ下。
沢田家は代々雲雀家に仕えていて、彼も、幼い頃からずっと恭弥の傍にいた。
もっとも、幼い頃は使用人と言うよりも遊び相手の意味合いが強かったのだけれど。

恭弥の母は、恭弥が幼い頃に亡くなった。
恭弥はまだまだ親が必要な歳であったので、父親は息子の世話をしたがった。
けれど、彼も大会社の社長という身、多忙故にそれは叶わなかった。

父親は、妻と息子をとても愛していた。
恭弥を心配した彼は、乳母として、最も信頼の置ける沢田家の人間に息子の世話を頼んだ。
それが綱吉の母・奈々で、恭弥は彼女のもとで、綱吉と兄弟同然に育てられたのである。

綱吉が恭弥専属の使用人になるのは必然とも言えた。


起き抜けでぼんやりしている恭弥を尻目に、綱吉が部屋のカーテンを開けた。大きな窓なので、朝日が一斉に充満する。

それでもまだ眠くて、ベッドから顔を出さずにいると、綱吉の困ったような声が降ってきた。

「恭弥様、起きてください。でないと俺が叱られてしまいます」

「…別に、僕は君が怒鳴られようと殴られようと知ったことじゃないんだけど」

「恭弥さまぁ」

綱吉があんまり情けない声を出すものだから、恭弥は少し笑ってしまった。

「じゃあ、」

毛布の中から手を出して、綱吉の頬に触れた。

「綱吉がキスしてくれたら起きる」

綱吉は一瞬目を見開いて、それからふっと破顔した。

「…仕方ないですね」

綱吉の顔が近づいてくる。
恭弥は目を閉じて、優しいキスを受けとめた。

「おはようございます、恭弥様」

「おはよう、綱吉」

起き上がって、今度は恭弥の方から、唇を重ねた。




大会社の御曹司とその使用人。しかも男同士。
この関係が許されざるものであることくらい、恭弥にだってわかっている。
けれど、今だけは、このぬるま湯のような心地でたゆたっていたい。そう思うのだ。

「今日は家庭教師が来ない日なんだ。綱吉、買い物につきあってよ」

「喜んでお供しますよ、恭弥様」

今はまだ、繋いだ手を離したくない。

(ま、泣いて嫌がったって、離してやる気は毛頭無いんだけど、ね)



END


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芹沢朔乃さまに捧げます。




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