キリ番
□200'
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※ギャグ
「ヒバリさん!俺を踏んでください!!」
オトナの世界?
それは昼休みの教室に奇妙に響いた。教室は静かになり、皆の視線は教室の後ろのドアの周辺に集中した。
嗚呼、十代目。俺は貴方に忠誠を誓いました。けれど。
たまに貴方がわからないことがあります…。
偶然(かどうかは知らないが)通りかかったヒバリを十代目が呼び止めた。ここまでは、まぁいい。
…本音としては、ヒバリなんかと付き合ってほしくはないのだが、十代目から告白したのだから、俺がどうこう言う資格は無い。
だが、十代目がいきなり土下座して『俺を踏んでくれ』なんて…ちょっと、いや、かなりおかしい。
「えっと、十代目? 一体どうしたんです?」
すると彼は頭を少しあげて。
「昨日リボーンに聞いたんだ。『恋人同士なら、一度は彼女に踏まれるもんだ』って!だからヒバリさん、俺を踏…ッ!!」
言い終わらないうちに、ヒバリが十代目の頭をガッと踏み付けた。心なしか殺気がこもっている気がするのは気のせいか。
「…誰が『彼女』だって?」
低く押し殺した声。
ヒバリとの付き合いはそんなに長くないが、相当ご立腹だと、嫌でもわかった。
「え、だって、いつもヒバリさんが下じゃ…わわッ!!」
「……死にたいの?」
ヒバリが更に体重をかけたため、十代目は床とキスしそうになっていた。
…何の話をしているのか、わかりたくないのにわかってしまった自分が恨めしい。
「そうだ、獄寺くん! 君には恋人がいたよね? 君もあの人に踏まれたの?」
十代目が、ヒバリに頭を踏まれた状態で俺に話し掛けてきた。
…俺に話を振らないでください、十代目…。
まぁ確かに、アイツと付き合ってるのは事実だ。
だけど。
「…踏まれたことなんか無いですよ」
いい加減リボーンさんに遊ばれてるだけだって気づいてください…。
そう言うと、十代目の動きが止まった。
「え…本当に?」
「…嘘吐いてどうするんですか」
俺たちの周囲だけ、空気が凍りついたような気がした。
最初に口を開いたのはヒバリだったが、紡ぎだされた言葉は結果として過冷却を引き起こしただけだった。
「それで、結局そんなことのために僕を引き留めたわけ…?」
目の前には絶対零度の表情。そして凶器[トンファー]。
繰り出される攻撃から逃れる術を、俺(達)はもっていなかった…。
……あれ?よく考えたら、何で俺までトンファーの攻撃くらってるんだろう?
意識はそこで途切れた。
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気が付いたら、そこは保健室だった。
何でわかるのかって、保健室にはよくサボりに来てて、この天井は見慣れてるから。
…自慢にはならねぇな。
上体を起こそうとしたけど、その途端痛みが全身に走って、ベッドに逆戻りせざるをえなかった。
…俺は無実なのに。ヒバリの野郎。
十代目は、と探す間もなく、カーテンで仕切られている隣のベッドから、彼と彼の恋人の声が聞こえてきた。
「まったく、君、馬鹿じゃないの?」
「…自覚してます…。でも、俺、ヒバリさんともっと近づきたかっただけなんです。それだけは…」
「わかってるよ、馬鹿沢田」
「ヒバリさん…」
隣から飛んでくるハートの群れに、俺はすっかりあてられてしまった。
…って、もしかして、本当にからかわれたのって、俺?
リボーンさんの真の意図を悟って、俺は愕然としたのだった。
END
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雛菊さまに捧げます。
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