キリ番

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※EDネタ。





嗚呼、愛し君よ。




別れの唄に接吻けを




クラトスがデリス・カーラーンに行く時間になって、ロイドは彼と共に森の奥へ来ていた。
そこは聖地。救いの塔が残骸として残っている。

そして今、聖地は二人を隔てる扉へと姿を変えつつあった。


ずっと一緒に、なんて無理なことくらい、わかっていた。
だけど本当は、ずっと自分の傍にいてほしかった。

気を抜けば『行かないで』という言葉が口をついて出てきてしまいそうで、ロイドは唇を噛みしめる。

クラトスの儚い笑顔を見ていると目が潤んできて、たまらなくなったロイドは細身の体を抱きしめた。

この温もりが、ずっと自分の傍にいてくれたらいいのに…。

それが叶わないことくらい、わかっているのだけれど。

「クラトス…」

切ないのは、ロイドだけではなかったらしい。
クラトスの腕が、ロイドを抱き返した。

いつもなら、恥ずかしがって絶対に返してはくれないのに。
愛しい彼の珍しい行動が、愛しさと共に切なさまでも煽ってしまう。

視線を上に移すと、鳶色の瞳がゆらゆらと揺れていた。

ロイド。
そう呼ぶ声が聞こえてきそう。

視線が絡まり、そこから自然に距離が縮まる。
そして、静かに口づけを交わした。

何度も何度も、触れ合うだけのキスをして、それから次第に深いものへと変えていく。

お互いの呼吸を奪うかのごとく、激しく求め合い、抱きしめる腕に更に力をこめた。
あらゆる激情を、唇に託して。

「ぁ…ロイ、ド…ッ」

「クラトス…好きだよっ…」


ぽたりと、地に落ちた涙は、一体どちらのものだったのだろうか。


唇を名残惜しげに離して、見つめ合い、微笑みを交わした。痛いほどの切なさと愛しさを滲ませて。

「ずっと…ずっと好きだよ、クラトス」

「ロイド…」

もう一度、触れるだけのキス。

お互いを忘れないように。
また、逢えるように。

「いつか、また此処で逢おう。ずっと、ずっと待ってるから」

「ああ、必ず逢いに来る。例えお前が冷たくなっていようとも…」

約束は、互いの唇に刻まれた…。



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“―お前は私より先に死ぬな。
 ロイド、私の息子よ…。”


空へと消えゆく天使の姿を、少年はいつまでも見つめていた。

「…馬鹿だな、死なないよ。あんたを待ってるって、約束したんだから…」

流れる涙を風の所為にして、ロイドは微笑った。


『あいしてるよ。』



END


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キエラさまに捧げます。




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