キリ番

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※注意!

・ギャグというかなんというか。
・まったく活かせてないけど女装ネタ。
・ティト→ヴェイ
・ティトレイ微妙(?)に変態。


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もしも、もしも神様がこの世にいるのなら。

オレはそいつをぶちのめしたい。




HAPPY HALLOWEEN?




ふと、宿屋の壁にかかるカレンダーを見て、今日がハロウィンだということに気がついた。

スールズにいた頃は、毎年おばさんが焼いてくれるパンプキンパイが楽しみだったな…。

そんなことを考えつつ、オレはベッドに寝転がり、そのまま眠りに就いてしまった。



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「あ、ヴェイグさん。起きました?」

アニー?
どうしてオレの部屋に…。

「ここはアンタの部屋じゃないわよ。私達の部屋」

!?
部屋を間違えたのか!?
すまない、すぐに出ていくから…。

「いえ、ユージーンに頼んで、寝ているところを連れてきてもらったんです」

なんだ、そうなのか…。
(ユージーンはアニーの頼みなら何でも聞きそうだからな…。)

「それに、その格好で出ていくつもり?私達は構わないけど…」

格好? 何か変な服を着ていただろうか。特に着替えをした覚えはないが。

不審に思って、何故か目の前に用意されていた大きな鏡を見てみれば。

「うふふ、ヴェイグさん、すっごく似合ってますよ。とても可愛いです」

見覚えのあるような娘が、ベッドの上に座っていた。

……というか、オレか? オレなのか!?

髪の毛は俗に言うポニーテールという形になっていて、レースのついた赤いリボンで結ばれている。
手のひらまで覆うほど袖の長い、膝丈のワンピースは黒色で、襟とスカート部分にフリルがあしらわれている。
足は白と黒のボーダーのオーバーニーと、服と同色のショートブーツに覆われている。
左胸の上あたりに飾られた赤い花のコサージュがアクセントの役割を果たしていて、控えめなデザインながらも上品な仕上がりになっている。

…って、評論をしている場合ではなかった。
わざわざ寝ている間に連れてくるなんて、普通ならしないことじゃないか。
初めに気づけばよかったのだ。無数に散らばる違和感に。

しかし、どうしてこんな格好をさせたんだ?

「実は、ティトレイさんのところへ行って、お菓子をもらってきてほしいんです」

Trick or Treat…か?

「ええ」

それだったらわざわざオレに着せなくても、お前達が着ればいいんじゃないか?
この服なんてアニーに似合いそうじゃないか。

「とんでもない! もちろんそう言ってもらえるのは嬉しいですけど、ヴェイグさんにとってもよくお似合いですよ!」

アニー…そう言われてもオレは嬉しくないのだが。

というか、何故自分の姿に違和感が無いのだろう…。

「それに、アンタが行ったほうが効果的なの」

? オレが女装していくことに何か意味があるのか?

「大アリよ。…まぁ、行ってみればわかるわ。さぁ、ドアの外でマオが待ってるから、早く行きなさい」

しかし…。

「ヴェイグさん、実は、さっきおばさんからパンプキンパイが届いたんですが……。行ってきて、くれますよね?」

…!

オレは、差し出されたカボチャのランタンを拒否できなかった…。



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「ヴェイグ、すっごく可愛いヨ〜!」

…嬉しくない。

今オレは、ミイラ男の仮装をしたマオと共にティトレイの部屋に向かっている。ティトレイの部屋は同時にオレの部屋でもあるわけだが、この際どうでもいいだろう。

どうしてマオは女装していないんだ? マオのほうが可愛いだろうに。

「ん〜、相手が見ず知らずの人だったらボクがしてもいいんだろうけど、今回のターゲットはティトレイだからネ〜」

ヒルダも同じようなことを言っていたな。
どういうことなんだ?

「…ヴェイグ? ドコ行くの? 着いたヨ?」

どうやら考え込んでいる間に、目的の部屋のドアを通り過ぎてしまったらしい。そもそも、位置的にそんなに遠くない。

…やっぱり、帰る。

「ここまで来といて何言ってるのヴェイグ! …それに、キミの部屋はココでしょ?」

! そうだった…すっかりその事実を忘れていた。

「じゃあ、行くヨ〜! Trick or Treat!!」

バタン!と大きな音がして、扉が開いた。その先には少し呆れたような顔をしたティトレイ。
近くのテーブルにタルトのようなものが乗っていることから、お菓子を欲しがるお化けが来るのを知っていたことがわかった。

「マオ、別にそんなに力一杯開けなくても、ティトレイ特製チーズタルトは逃げないぜ……、って、え!? もしかして…ヴェイグ!?」

もしかしなくても、そうだが。…やはり変か。

「い、いやいやいや!全然変じゃねぇよ!むしろすっげー可愛い!!」

…そんなに力説されても、やはり嬉しくもなんともないのだが。
微妙な表情で返しても、ティトレイの惚けたような表情は変わらなかった。

「ほらヴェイグ!Trick or Treatだヨ!」

そうだ、忘れるところだった。
オレは一歩前に出て、左手を手のひらを上にした状態で前に突き出した。台詞をつけるなら“寄越せ”だろうと思われるポーズだが、状況はそんなに変わらないだろう。多分。

Trick or Treat。

言った瞬間、目の前のティトレイの鼻からたらりと赤いものが垂れた。鼻血だ。

「いくらでも持っていってくれッ!!」

こうしてオレ(達)は、チーズタルトを一ホールまるまる手に入れた。



結局、オレの女装の意味は分からずじまいだった…。



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「ありゃ、反則だよな…」

むしろいたずらしてくださいって(マオがいなければ)言いたかったなー……。

床に突っ伏したティトレイの呟きは、部屋に虚しく響くのだった。



END


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マオさまに捧げます。




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