キリ番
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二人の生きる未来を
二人の青年が、何をするでもなく草原に寝そべっていた。
空は青く澄み渡っていて、雲がまるで白い魚のように漂っている。
ふいに、寝そべっている二人のうち緑の青年が、ぽつりと、独り言のように話し始めた。
「おれ、小さい頃は発明家になりたかったんだ」
もう一方の青の青年が、半身を起こして緑の青年を見た。
「発明家?」
「そ。ペトナジャンカで作られた鉄で、いろんな物を作ってみたかったんだ。まぁ、工場で働きだしてから今までずっと忘れてたことだけどな」
「…そうか」
「一番作りたかったのは、人を乗せて空を飛ぶ機械だな。鳥みたいに自由に空を飛ぶ乗り物」
「ティトレイらしいな」
「そ、そうか?」
青の青年が柔らかく微笑んで言うのに、ティトレイと呼ばれた緑の青年は照れ臭そうにうっすらと頬を染めた。
(その顔は反則だろ…可愛すぎだっつーの!)
「ヴェイグは?小さい頃何になりたかったんだ?」
ヴェイグと呼ばれた青の青年は、考える仕草を見せたあと、俯いて言った。
「なりたかったもの、か…。毎日を生きていくのに精一杯で、そんなのは無かったな…」
「将来の夢が無かった、ってことか?」
「ああ。…すまない」
「いや謝ることじゃないけどよ…」
ティトレイは少しの間思案して、ヴェイグに提案するように言った。
「じゃあこれから考えていけばいいんじゃないか?おれと一緒に、さ」
「ティトレイ…」
それはまるでプロポーズ。
言葉の裏に隠されたメッセージを感じ取ったヴェイグは、ふっと破顔した。
「…ああ」
滅多に見れないヴェイグの心からの笑顔に、ティトレイもつられるように笑った。
いつまでも、こんな風に二人で穏やかに笑っていたい。
そんな想いを胸に抱いて、二人の青年は青空を見上げるのだった。
END
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廻夜さまに捧げます。
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